2011 Fiscal Year Research-status Report
高密度地震観測データ解析と大規模数値計算に基づくフィリピン海プレートモデルの構築
Project/Area Number |
23540490
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古村 孝志 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (80241404)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地震 / プレート |
Research Abstract |
Hi-net高感度地震観測網で記録された、フィリピン海プレート内地震および太平洋プレートで発生した深発地震の波形を解析し、プレート深度の急変地域(断裂地帯)を横切るような観測点配置で速度波形を並べ、地震波形の変化を精査した。特に、プレート内の不均質構造の影響を強く受ける短周期地震動(f>2Hz)をハイパスフィルタ処理にて取り出し、(1)卓越周期等の変化、(2)波形振幅の急減、(3)コーダ波の変化、(4)反射波・変換波の発生を調査した。この結果、紀伊水道下でフィリピン海プレートの断裂が想定される地域を通過する地震波の高周波数成分が減衰し、また低周波数の先駆波の形状が急激に変化することを複数の地震データで確認した。この原因を明らかにするために、プレートの"連続"そして"断裂・狭窄化"をモデル化した2次元地震波伝播シミュレーションを行い、地震波形に現れる顕著な特徴の再現を試みた。この結果、プレートが数十キロメートル以下の範囲での狭窄では地震波の急変は起きず、周囲のマントルを通過した地震波が再びプレート内に入り込むことがわかり、地震波形の急変にはプレートの完全な断裂が必要であることが確認できた。また、プレート構造変化に伴う地震波伝播の異常現象を定量的に議論するために、3次元シミュレーションの必要性が再確認された。プレートの断裂面から反射波が生成することが期待されるが、今年度の研究ではそのような反射波の存在を確認することができなかった。これは、断裂面がシャープな境界になっていない可能性があり、引き続き精査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北地方太平洋沖地震の影響により、日本全体での地震活動の活発化により地震データが多数得られた反面、余震が多発して地震波が重なるなどデータ処理にあらたな工夫が必要となり、その処理系の設計にやや時間を要した。新たなデータ処理系が年度末に完成し、また、余震活動が静かになりつつあることから、今後は順調に研究が継続できると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
不均質なプレートで減衰する地震波の特性と、不均質プレートの形状の把握を、高密度観測データの解析とコンピュータシミュレーションの両面から進めるために、高密度地震計データと3次元シミュレーション結果の可視化技法の開発を進める。海洋研究開発機構の地球シミュレータと、計算科学研究機構の京コンピュータを用いて、日本列島規模の3次元地震波動伝播シミュレーションを周波数3~5Hz程度以上の高周波数地震動を含めて計算する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
地震波動場の可視化のために、高機能の可視化ソフトウエアを導入する。また、本研究に関連して、フィリピン海プレートおよび太平洋プレートの不均質構造と地震波動場変化の研究を進めている韓国および台湾の研究者を招聘し、地震波解析と地震波伝播シミュレーションの両面から共同研究を行う。研究成果の公表のために、国内外の学会で研究発表を行う。
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Research Products
(1 results)