2013 Fiscal Year Research-status Report
地震メカニズムトモグラフィーによる地殻内三次元間隙流体圧場の時間発展解析
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23540493
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
寺川 寿子 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (30451826)
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Keywords | 間隙流体圧場 / 地震 / メカニズム解 / 応力場 / 注水実験 / 誘発地震 |
Research Abstract |
本研究課題は,地震メカニズムトモグラフィー法(FMT法,Terakawa et al., 2010, Geology)を発展させ,地震のメカニズム解から地殻内間隙流体圧場の時空間変化を推定し,大地震に伴う余震・誘発地震の発生メカニズムを解明することを目的としたものである.前年度までに,スイス・バーゼルの地熱貯留層での注水実験で誘発された地震データから地熱貯留層内の間隙流体圧場を推定することに成功し,本手法の有効性を確認した(Terakawa et al., 2012, JGR).一方,より広域な領域を対象とするために,「応力場の空間変動を考慮する機能」を追加開発した(2012年日本地震学会秋季大会, A11-08). H25年度は,まず,「応力場の空間変動を考慮する機能」を使用し,日本列島域の広域応力場(Terakawa & Matsu'ura, 2010)と名古屋大学の地震観測で得られた高密度な地震データにFMT法を適用し,御嶽山周辺域の3-D間隙流体圧分布を推定することに成功し,間隙流体圧場と地震の発生の関係を分析し,その成果を論文として発表した(Terakawa et al., 2013, Tectonophysics).また,本課題の最も大きな課題となっていた「間隙流体圧場の時間発展解析機能」の開発を実施した.まず,模擬データを用いたテスト計算を通じて時間発展解析機能のチェックを行った.その後,本手法をH24年度に使用したものと同じバーゼルの誘発地震データセットに適用し,注水刺激により地熱貯留層内に間隙流体圧場が形成されてゆく様子(10日間)を再現することに成功した(2013年日本地震学会秋季大会, A21-01).本研究の成果により,地震の発生と応力場と間隙流体圧場の関係が初めて明らかになり,継続して論文にまとめているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度(H25年度)は当初予定していた3年間の実施期間の最終年度であった.この3年間,従来のFMT法を注水実験による誘発地震データに適用することで,手法の有効性を示すことに成功し,さらに,予定していた通り,「応力場の空間変動を考慮する機能」と「間隙流体圧場の時間発展解析機能」を新たに開発することに成功した.手法の有効性と「応力場の空間変動を考慮する機能」に関しては,2本の国際誌に成果をまとめることができた.また,本研究の中で最も挑戦的なテーマであった「間隙流体圧場の時間発展解析機能」の開発に成功したことは,地震の発生における地殻流体やテクトニック応力の役割を定量的に議論することに大きく貢献するものである.残念ながら,3年間のうちに論文発表までこぎつけなかったので,期間を1年延長し,論文受理を目指したい.
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度から継続して,バーゼル地熱貯留層での間隙流体圧場の時間発展解析の結果を分析し,その成果を国際誌に論文として発表する予定である.余裕があれば,大規模計算を実施することを目指し,並列計算機用の線形ライブラリーであるScaLAPACKを利用して解析プログラムの並列化を行う.また,開発したプログラムを用いて,2009年12月以降にラクイラ地震震源域で発生した時間的にも空間的にも高密度な地震のメカニズム解,約700個を解析し,本震前後約8カ月間の3次元間隙流体圧場の時空間発展を推定する.地震メカニズムのデータは,H25年5月に打ち合わせを実施した研究協力者であるイタリア・INGVのChiaraluce博士から提供して頂いたものを使用する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年夏ごろより,バーゼル地熱貯留層間隙流体圧場の時間発展解析を実施し,秋ごろから論文執筆を始め,論文投稿の準備をしてきた.しかし,年度内に国際雑誌へ投稿から審査を経て受理に至るまでには,更に時間が必要であることが判明した(2014年1月頃).このため,論文受理まで,本課題を継続して実施する必要が生じた. 国際誌への論文投稿料として約40万円,別刷り代として約30万円を,H26年度の論文出版経費に充てさせていただきたい.
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