2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540508
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山中 勤 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80304369)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生態水文 / 種間競合 / 根系吸水 / 水循環 / 生態系 |
Research Abstract |
乾燥・半乾燥地域のみならず、我が国のような湿潤地域においても植物種による水の吸い分けが生じていることが明らかとなっているが、そのメカニズムは不明な点が多い。そのような課題を克服するには、まず吸水深度の推定手法に高い信頼性が求められるが、これまでのところ十分な検討はなされていない。 そこで、植物根系による吸水深度推定手法の妥当性検証ならびに高度化を目的として、筑波大学陸域環境研究センターならびに東京農工大FM唐沢山の2箇所に試験サイトを設置し、安定同位体測定の為の水サンプリングを定期的に行うとともに、蒸散速度・根密度等の物理計測を行った。取得されたデータをもとに、同位体逆解析ならびに異種共存系の根系吸水モデルによる数値シミュレーションを実施し、二つの独立した手法によって吸水密度プロファイルを推定した。 その結果、両手法による推定結果が場合によって大きく異なることが示された。その原因を追究するため、根系吸水モデルの各パラメータを操作した感度実験を行ったところ、当初予想された根の透過抵抗の調節だけでは同位体逆解析結果と整合する結果は得られないことが判明した。一方、根系密度を調節したところ、相対的に良好な結果が得られた。このことは、物理計測による根系密度が根の吸水機能を正確に反映していない可能性を示唆している。しかしながら、同位体逆解析のアルゴリズムにも改善の余地がある可能性がある。今後、新たな観測項目を加えてさらなるデータの蓄積を図りながら、両手法の改良を継続する予定である。また、根系吸水モデルに直接同位体過程を導入する試みにも着手した。これにより、モデルと同位体分析結果の整合性をより詳しく分析することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初購入を予定していた測器の生産が中止され、既存のシステムによる観測を余儀なくされるなどの問題はあったものの、初年度に計画していた内容はほぼ100%実現できた。同位体逆解析手法と数値シミュレーション手法による根系吸水密度プロファイルの推定結果には不一致も認められるが、これは想定の範囲内であり、今後新システムによる観測とデータ解析を継続することにより解決できるであろうとの見込みを持っている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度末に購入した新システムによる観測を開始するとともに、高性能計算機を導入して同位体逆解析・数値シミュレーション両手法のアルゴリズムの高度化を図る。また、複数の学生に解析補助を依頼し、効率的に解析を進める。また、国際会議等で初期的な研究成果を公表し、世界的に著名な研究者との議論を通じて、さらなる研究の発展を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高性能ワークステーションを導入するとともに、解析補助者の為のノート型PCを複数台購入する。野外観測および同位体分析の実施に必要となる消耗品類を購入する。また、国際会議等への参加旅費を使用する。
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