2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23540508
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山中 勤 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80304369)
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Keywords | 生態水文学 / 同位体 / 数値シミュレーション / 根系吸水 / 水源分化 / 種間競合 |
Research Abstract |
樹木による吸水密度プロファイル推定の信頼性向上を目的として、正規分布を仮定した同位体トレーサー手法と数値シミュレーション手法の両者の改善を図った。個体間競争のみが存在する単純林と種間競合が併存する混合林を対象として両手法を適用し、幾つかの条件を想定して推定結果を比較したところ、根密度実測値を用いた数値シミュレーションでは土壌水ならびに導管水の同位体比を再現できないことが判明した。そこで、これらの再現精度を向上させるように根密度を修正し、同位体トレーサー手法による吸水密度プロファイル推定結果と比較したところ、良い一致が得られた。特に、正規分布の標準偏差に下限を設定することで同位体トレーサー手法と数値シミュレーション手法による吸水密度プロファイルは極めて良く一致することが明らかとなった。以上のことから、両手法を併用することで吸水密度プロファイル推定の信頼性を著しく高めることができると結論付けられた。 また、上記手法による観測データの解析の結果、吸水深度は蒸散量に依存し、蒸散が少ない季節に深部からの吸水が相対的に増加することが示された。さらに、種間競合が存在しない場合は吸水深度が比較的小さく維持されるのに対し、種間競合が存在する場合は蒸散量の少ない樹種の吸水深度が増大し水源分化が達成されることが確認された。以上の結果から、水の吸い分けは根系分布が異なる種間競合の結果生じ、蒸散量の多寡が水源分化様式を左右するとの結論が導かれた。
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