2012 Fiscal Year Research-status Report
金星大気大循環モデルの高度化に向けた微細擾乱の数値実験
Project/Area Number |
23540514
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 勝 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (10314551)
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Keywords | 金星大気 / 対流 / 波動 / 大気大循環 / 微物理 |
Research Abstract |
金星GCMの高度化に向けた3次元マイクロスケール数値実験を行った.雲層の対流層に関しては,「渦拡散係数」や「掩蔽観測で見られる安定度の微細構造」の雲底での熱flux依存性を調査した.地表に関しては,非常に弱いsuper-rotation (~0.1m/s)では,対流調節によって,地表付近でsub-rotationが生じる.このように,金星地表付近でsuper-rotationであっても,その値が非常に小さいと,対流調節によってたやすくsub-rotationとなり,地面からの角運動量供給が可能になる. マイクロスケール実験の結果をパラメタライズするためには,パラメタライズしたルーチンを組み込む先であるベースモデルの整備も不可欠である.昨年度から引き続き,金星中層大気GCM (Yamamoto and Takahashi 2012)を開発し,超回転や極渦の力学について調査した.それと並行して,金星の微細構造を再現するために使用する微物理モデルの高度化に向けて,個別のサブルーチンの精度の検証した(Yamamoto 2012).特に,力学に関しては以下のような成果が得られた.超回転と子午面循環と南北温度差の強度の時系列を散布図で示すことによって,異なる2つの超回転パターンが現れるケースがいくつかあった.それらのケースでは,超回転の崩壊において,惑星スケール波の臨界高度と運動量収束が重要な役割を果たしている.金星の極渦について詳細な解析を行った.極域のcold collarとhot oval (monopole)は,東西波数1の潮汐波によって強められる.東西波数が1より高波数の発散性擾乱が極付近の高温域で卓越するとき, dipoleやtripoleの温度コントラストが生じ,極渦が時々刻々と変動する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の交付申請書に書かれているとおり,金星の雲層付近のマイクロスケール気象シミュレーションを行い,その結果を解析した.これらのマイクロスケール実験と並行して「大循環モデル」や「エアロゾル輸送モデルの微物理過程」の整備を行った.これらの成果は,国内外の学会(39th COSPAR Scientic Assembly, Mysore, India; AOGS-AGU(WPGM) Joint Assembly, Singapore; European Planetary Science Congress 2012, Madrid, Spain; JAXA宇宙科学研究所・第27回大気圏シンポジウムなど)で発表された.また,微物理過程に関するモデル開発の成果の一部は学術誌(AAQR 12, 1125-1134)に掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
金星大気大循環モデルの高度化が目的なので,微細擾乱の数値実験と並行して,大循環モデルやエアロゾル輸送モデルの整備を行う必要がある.特に,乱流混合過程を結合させる大循環モデルや微物理モデルの予備実験を引き続き行う. 加えて,金星雲層付近での「対流」や「惑星スケール波の飽和」から射出される重力波に関する数値実験を行う.特に,鉛直運動量フラックスや静的安定度の微細構造について詳しく調査する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「金星雲内の対流層」や「重力波の飽和」を解明するには高解像度の数値実験が必要となり,大型計算機を用いる.また,地球流体力学の視点で「安定層に挟まれた対流層」や「安定成層への対流の貫入」が渦拡散過程にどのような影響を与えるのか?を明らかにするために,詳細なデータ解析をパソコンおよびサーバーで行う.これまで蓄積された大量のデータは大容量ハードディスクにバックアップしなければならない. 上記の成果を国内外の学会で発表するために旅費が必要となる.さらに,23-25年度の成果を論文で発表するため,国際誌論文掲載料や英文校正費も必要となる.
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Research Products
(7 results)