2011 Fiscal Year Research-status Report
ケラマギャップ通過流と黒潮擾乱の組織化が駆動する沖縄トラフ中深層循環の研究
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23540516
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中村 啓彦 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (50284914)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁科 文子 鹿児島大学, 水産学部, 助教 (80311885)
山城 徹 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (20158174)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 韓国 / アメリカ合衆国 / 海洋物理学 / 海洋観測 / 深層循環 / 沖縄トラフ / hydraulic control |
Research Abstract |
本研究は、沖縄トラフ中深層の海水循環理論を構築することを目的としている。H23年度は主に、「かごしま丸」によるケラマギャップでの観測と取得データの解析を行なった。 H23年6月の「かごしま丸」航海でケラマギャップに設置していた係留型流速計を回収し、過去2年間にわたり米国ロードアイランド大学と共同で行なってきたケラマギャップ通過流の観測を終了させた。この2年間の流速データの解析から、ケラマギャップ中深層の北東側斜面に沿って北太平洋から沖縄トラフへ流入する10cm/sを越える安定した通過流が存在することが明瞭になった。Hybrid Coordinate Ocean Model(HYCOM)によるデータ同化結果(米国海軍研究所提供)を解析した結果、この安定した流れは南西諸島の東側斜面に沿って北上する琉球海流(500~1000m深に流速コアをもつ潜流)がケラマギャップの入り口(北東斜面)で分岐したものであることが強く示唆された。一方、「かごしま丸」航海によりケラマギャップ周辺の14観測点で得られたCTDデータと、沖縄トラフを覆うアルゴフロートのプロファイルデータ(6415個)を解析した結果、北太平洋の中層(約1000m深)の海水がケラマギャップの海底上を乗り越えて、沖縄トラフ南部の深層(1000~2000m深)に潜り込む様子が炙り出された。この様子はinternal hydraulic jumpの特徴と一致しており、ケラマギャップ通過流がhydraulic controlされている証拠とみなされた。このことは、ケラマギャップ通過流の流量はhydraulic controlされている可能性を示している。さらに、ケラマギャップの水深より深い沖縄トラフ南部の中深層水は、hydraulic jumpによる海水の潜り込みと、その後の鉛直混合によって涵養されていることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書には、研究計画として(1)沖縄トラフ中深層の海洋観測と歴史的観測データの解析,(2)沖縄トラフの中深層循環の数値実験と理論の構築,(3)次期観測計画の立案と国際共同観測体制の組織化を行なうことを掲げた。このうち、H23年度は(1)と(2)を進める計画を立てていた。順次、目的の達成度を検証する。(1)H23年6月に行なった「かごしま丸」航海で、ケラマギャップに設置されていた係留観測機器を回収するとともに,ケラマギャップ周辺の中深層での海水特性を把握するためのCTDによる水温・塩分データを取得した。これらの観測結果と既存データ(アルゴフロートデータ)を利用して、上記「研究実績の概要」で述べたようなケラマギャップと沖縄トラフの循環像を描くことに成功した。この成果は、H23年9月に開催された日本海洋学会秋季大会で、流速分布については研究代表者の中村が水塊分布については研究分担者の仁科が発表した。さらに,H24年2月に米国で開催されたthe Ocean Science Meeting(American Geophysical Union)では、ケラマギャップ通過流がhydraulic controlされていることに焦点を当てたポスター発表を行なった。hydraulic controlについては計画当初は全く予測しておらず、水塊分析からその証拠が得られたことは非常に大きい成果であった。(2)H23年度の後半から数値実験をスタートさせる予定であった。しかし、このための領域海洋モデルを開発する前に、既存の数値モデルの結果(米国海軍研究所によるHYCOMのデータ同化結果)を解析することを優先させたため、モデル開発は次年度に再送りされた。HYCOMのデータ同化結果の解析から、hydraulic controlの証拠が検出されたため、この選択は正解であった。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度の研究成果より、ケラマギャップでのhydraulic jumpは、通過流量と沖縄トラフ南部の深層水形成に対して重要な役割を担っていると推測される。したがって、今後の海洋観測では、ケラマギャップでのhydraulic controlと沖縄トラフ南部の中深層水特性の実態把握に努める。以下、観測・資料解析と数値実験に分けて詳細を説明する。1)海洋観測と歴史的観測データ解析[観測(中村,仁科,東大/院理学系研究科/地球惑星科学専攻/日比谷研究室),水塊分析(仁科,中村,大学院生1名)] H24年6月の「かごしま丸」航海で,ケラマギャップ周辺および沖縄トラフ南部の中深層での海水特性に関する観測を行う。この観測では,前年に実施体制をほぼ整えた溶存酸素測定を行う。さらに、東大日比谷研究室と共同で深海乱流計を用いてhydraulic jumpの後流で起る乱流混合を測定する。これにより、hydraulic jumpの後流で沈降した海水と表層水の鉛直混合過程を明らにする。 H23年度の研究で、アルゴフロートのデータを用いた水塊分析が、沖縄トラフ中深層の循環把握に有効であることが示された。H24年度以降も、この手法による水塊分析を進める。2)中深層循環の数値実験と理論の構築 [担当:中村,山城,大学院学生1名] 理想化された条件での領域海洋モデルを作成して、ケラマギャップ通過流の流入形態(internal hydraulic control)と黒潮擾乱の組織化(Neptune効果)に対する沖縄トラフ中深層循環の応答に関する数値実験を行う。理論構築の鍵となる非定常流のinternal hydraulic controlの理論は確立されていない。そこで、鹿大水産学部練習船南星丸を利用して、鹿児島湾の桜島水道等のinternal hydraulic jumpの観測を行い理論構築に役立てる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は合計で190万円を支払請求する。その内訳は、以下のとおりである。1)6月の「かごしま丸」航海での観測経費として合計90万円:この観測では、東大日比谷研究室の協力を得て、深海乱流の共同観測を行う。そのための費用として70万円(東京-鹿児島間の機材輸送費20万円、観測消耗品費10万円、3人分の観測参加者旅費40万円)を計上する。さらに酸素測定等に係る観測消耗品購入のための費用として20万円を計上する。2)研究成果を公表するための経費として合計80万円:米国サンフランシスコで開催されるAGU Fall Meeting(12月)(American Geophysical Union主催)への参加費(1人分)として30万円、日本海洋学会秋季(9月)および春季大会(H25年3月)へ各1人参加するために20万を計上する。これら以外に、論文公表に係る費用として30万円を計上する。3)研究や観測で必要となる謝金や消耗品購入費として20万円
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Research Products
(6 results)