2012 Fiscal Year Research-status Report
関東平野に突風をもたらすシビアストームの発生機構に関する研究
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23540518
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
益子 渉 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (30354476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 洋 気象庁気象研究所, 気象衛星・観測システム研究部, 主任研究官 (00354522)
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Keywords | 竜巻 / シビアストーム / 突風 / 気象学 / 自然現象観測・予測 / 自然災害 |
Research Abstract |
本年度は、2012年5月6日につくば市に甚大な被害をもたらした竜巻について、現地調査を含む観測データの収集、気象研に設置されている二重偏波レーダーのデータ解析、高解像度数値シミュレーション等を実施した。その結果、環境場については、関東平野の下層に暖湿流が流入し大気の状態が不安定あったことと、風が鉛直方向に時計回りに変化していることが特徴で、スーパーセルの発生しやすい状況であったことが確かめられた。竜巻をもたらした積乱雲については、典型的なスーパーセルの特徴をもっていることが観測データから明らかになった。また二重偏波レーダーにより国内で初めて竜巻の飛散物が上空に運ばれていく様子を捉えることに成功した。水平解像度を50mにした高解像度数値シミュレーションでは、スーパーセルを含めて竜巻の再現に成功した。その結果、高度4km付近に中層のメソサイクロンが顕在化した後、高度1km付近において下層のメソサイクロンが発達し、高度1km以下で30m/s以上の強い上昇流が形成されていたことが示された。これは先行研究で指摘されている米国中西部におけるスーパーセル竜巻発生の必要条件と一致する。本研究ではさらに、竜巻の発生過程に着目した解析を行い、スーパーセルの後方で局所的に強化された下降流が竜巻発生の重要なトリガーとなっていることが明らかになった。その他、2006年台風第13号に伴い宮崎県で発生したスーパーセル竜巻との比較を行い、同じスーパーセルでも環境場や構造に大きな違いあることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年5月6日につくば市に国内最大級の被害をもたらした竜巻について、現地調査を含む観測データの収集、気象研に設置されている二重偏波レーダーのデータ解析、高解像度数値シミュレーションを実施し、竜巻をもたらした積乱雲や竜巻について、構造や発生過程の解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年5月6日につくば市を襲ったスーパーセル竜巻について、二重偏波レーダーや高解像度数値シミュレーション結果の解析により、竜巻の発生機構を明らかにする。竜巻の発生機構に関しては、中層・下層のメソサイクロンや竜巻に対して、後方トラジェクトリ解析をもとに循環の計算を行い、その時間変化量について傾圧項や摩擦項を評価することにより、渦の生成要因を明らかにする。そして、米国中西部におけるスーパーセル竜巻の最新の研究や国内で発生した他の顕著な事例との比較を行い、違いを明らかにする。内容は国際学会等で発表し、論文等にもまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに得られた成果を、国際学会や国内学会において発表するため、大会参加費や旅費に使用する。また、数値シミュレーションや観測データの解析、論文等の執筆のため、電子計算機を購入する。
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