2011 Fiscal Year Research-status Report
エルニーニョ発生機構の解明:沿岸湧昇と高山山脈に着目した高解像度気候モデル研究
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23540519
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
長谷川 拓也 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (40466256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
美山 透 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (80358770)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | エルニーニョ / 大気海洋相互作用 / 沿岸湧昇 |
Research Abstract |
(1)SINTEX-F2の150年実験結果解析:パプアニューギニア(PNG)沖の沿岸湧昇発生期間をモデル海面水温データなどの解析から検出した。次に、モデルの大気海洋データを解析することによって、沿岸湧昇発生後に西風強化・暖水プール東進を伴うエルニーニョ(「湧昇先行型エルニーニョ」)を検出した。150年間で約40個のエルニーニョが発生したが、その約半数が湧昇潜行型エルニーニョであることを確認した。これらの解析結果を国際会議で発表した。本結果はPNG沿岸湧昇がエルニーニョ発生と密接に関連することを示唆する結果であり、エルニーニョ発生機構の理解に寄与するものである。(2)PNG沿岸湧昇海面水温パターンに着目した感度実験:PNG沿岸湧昇時に観測された海面水温パターンを境界条件として、大気領域モデル(iRAM)を駆動して、海面水温変化 に対する大気応答を調べた。PNG沿岸湧昇時の海面水温低下を強めた場合には、西風が強まることを確認した。さらに、山岳地形を除去する実験も行い、山岳地形が湧昇を引き起こす北西風に寄与する可能性を示唆する結果を得た。解析結果を国際会議で発表した。本結果は、沿岸湧昇時に現れる海面水温パターンやPNGにおける高山山脈がPNG周辺の大気場に与える影響について新たな知見を与え、西部赤道太平洋の大気海洋陸面変動の解明に寄与する。(3)領域結合モデル(iROAM)の開発:東部赤道太平洋ですでに実績がある大気海洋結合領域モデル(iROAM)を、ハワイ大学の共同研究者の協力の下、コンポーネントを一新するとともに、西部赤道太平洋に適合させるためのチューニングなどを行った。実験終了後にモデル再現性を調べて、来年度以降の実験実施に向けた作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実施項目は大きく分けると、(1)SINTEX-F2の150年実験結果解析、(2)PNG沿岸湧昇海面水温パターンに着目した感度実験、(3)領域結合モデル(iROAM)の開発の3項目に分割できる。上述したように、各項目において当初の計画に沿った活動を行うことができ、初年度の目的をほぼ達成することができた。(1)においては、湧昇先行型エルニーニョが全エルニーニョの約半数を占めることを明らかにすることができ、初年度の目的をおおむね達成した。(2)においては、沿岸湧昇時に現れる海面水温パターンが大気場に与える影響の評価や、パプアニューギニアの高山山脈が大気場に与える影響の評価をiRAMを用いて行い、初年度の目的をほぼ達成することができた。さらに(1)と(2)においては、最新の結果を国際会議において発表を行った。また、(3)については、計画に沿ってハワイ大学の共同研究者との打ち合わせ内容を反映して、iROAMの西太平洋版の開発を行った。以上により、当初目的をほぼ達成することができたと自己点検によって評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の項目について研究を推進させる。(1)PNG沿岸湧昇とエルニーニョの関係の解明:SINTEX-F2実験結果を用いて、湧昇潜行型エルニーニョと、湧昇先行型エルニーニョとは異なり、沿岸湧昇が先行せずに発生するエルニーニョ(「湧昇非先行型エルニーニョ」)の比較を行い、互いの大気海洋プロセスの違いを明らかにする。また、沿岸湧昇が発生したにもかかわらずエルニーニョが発生しなかったケース(「エルニーニョ非発生湧昇」)が存在した場合には、互いの大気海洋プロセスの違いを明らかにする。(2) 海面水温および急峻地形効果の検証:初年度に引き続きiRAMを用いて、PNG沿岸湧昇時に現れる海面水温パターンやPNG上の急峻山岳地形を除去・変化させて駆動する感度実験を行い、地形の変化による沿岸湧昇、西風強化、暖水プール東進の振る舞いの変化を調べて、沿岸湧昇に関係する暖水プール上の大気海洋陸面相互作用を調べる。また、iROAMの開発完了後にiROAMを用いて同様の感度実験を行い、大気海洋結合システムにおける応答の違いを確認して、沿岸湧昇や山岳地形が大気海洋結合システムに与える影響について調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な研究費の使途として以下を予定している。(1)成果の発表や研究打ち合わせのために、学会参加や、海外共同研究者のいるハワイ大学に出張を行う。(2)備品に関しては、iRAMおよびiROAM実験出力を保存するためのハードディスクの追加購入を行う。また、研究成果をウェブサイトで公表するために、ウェブサイト作成支援ソフトウェアや公表データ保存用記憶装置(外付けハードディスクもしくはUSBメモリスティック)の購入を行う。
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Research Products
(3 results)