2012 Fiscal Year Research-status Report
地震に伴う平野の地滑り:地滑り堆積物の特徴とその発生メカニズムの解明
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23540533
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
酒井 哲弥 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (90303809)
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Keywords | 国際研究者交流 / ネパール / 地滑り / 地震 / 三角州平野 |
Research Abstract |
ネパールのカトマンズ盆地において,三角州平野環境で発生した地滑りに伴う堆積物の記載を昨年度に引き続いて実施した.今年度は昨年度よりも高精度のデータを取るために,その地層が露出している部分のすべての地点において調査を行った.その結果,液状化に伴って形成されたと判断される塊状の砂層が広域的に確認され,昨年度の調査で推定された,広域的な地下の液状化が平野での地滑りの鍵を握ることがよりはっきりと示された.また,地滑り堆積物が分布する地点のうち,東部には黒色で強い変形構造を内部に持つ泥層が認められたが,それが断片的に西部に分布することがわかった.これは,地滑りに伴う泥層の移動・変形に伴って,断片化した泥のブロックが,何らかの運動メカニズムにより,遠方に移動したことを示す.そのメカニズムとして,現状では「ハイドロプレーニング」現象が考えられる.この現象はこれまで,海底で発生する土石流に起こるとされてきた.この成果は陸上でもハイドロプレーニングが起こる可能性があることを示した,世界でも初めての結果である.また,このイベントが発生した年代を見積もるための年代測定を実施したが,適切な年代値が得られなかった. 今年度実施した室内作業において,地滑りの発生メカニズムを復元するための水槽実験装置を設置した.装置は循環型のものとし,地下の断層運動に伴って地面が傾動することを想定して,10度まで傾けることができるように設計した.現状では,三角州地形を復元する実験までを完了することができたが,そこに振動と傾動を与えるところまでの実験はまだうまく実施できていない.これは次年度継続して実施することとした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネパール・カトマンズにおける野外での情報収集に関しては,成果の部分でも述べたように,世界的に見てもこれまで見つかったことのないタイプの堆積物が見つかった.この成果は大きい.野外調査に基づく,地滑り発生過程の理解については,当初予定していたよりも大きく進展したと言える.年代測定については,当初予想していた結果が得られなかった.岐阜県の東海層群を対象とした調査は,今年度実施出来なかったが,データのとりまとめは進展し,投稿論文の作成に取りかかることができた.実験にかかる成果については,実験装置の作成したことがまず1つの進展である.実験装置の特性を把握するための実験に時間を要してしまい,予想していたよりも実験の進捗状況に遅れが見られる.これらのことを総合的に判断すると,当該研究はおおむね順調に進展していると自己評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進に関して,とくに重要な発見のあったカトマンズ盆地に関しては,1回2週間程度の野外調査を年1回実施していく予定である.とくに,新たに見つかったハイドロプレーニング現象の可能性を示す堆積物について,よりハイレベルの雑誌に投稿できるよう,確固たるデータを収集する予定である.とくに,軟X線撮影などの手法を取り入れて,地層の詳細な内部構造を観察することを予定している.昨年度,得ることができなかったこのイベント発生年代の見積もりについても継続的に年代測定を実施することとする.岐阜県の地層については,複数層準において,地滑り堆積物の記載作業を実施し,これまでに実施した調査で解読できた地滑りプロセスがより普遍的なものであるかどうかの検証を行う.水槽実験については,本実験を実施するための予備実験を推進させ,振動を与えた状態で,水槽を傾けて地滑り発生条件を捉えられるような実験実施に向けて研究を推進させていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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