2011 Fiscal Year Research-status Report
高分解能琵琶湖古環境変遷記録との対比による東アジアモンスーン変動メカニズム解明
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23540536
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井内 美郎 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00294786)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 水収支 / 気候変動 / 湖沼 / 堆積物 / 生物源シリカ / 音波探査 |
Research Abstract |
本年度は琵琶湖高島沖コアの生物源シリカ濃度測定と野尻湖音波探査記録の解析で前進が見られた。生物源シリカ濃度測定では、現在から過去約8万年間については時間分解能約50年で、過去約20万年までについては約200年で分析を行った。その結果、過去約8万年間については210年および510-560年周期の存在が明らかになった。これらは主に太陽活動の周期性と一致するとされているものである。過去約20万年間については分析間隔の問題から、やや分解能は落ちるが、23kyrと19kyrの歳差運動周期に加えて、1.0kyr, 1.2kyr, 1.5kyr, 2.3kyrの周期性の存在が確認できた。これらの結果とグリーンランドNGRIPコアおよび中国Sanbao/Hulu Caveの石筍の気候変遷記録とを比較した結果、非常に類似した変動(ダンスガード・オシュガーサイクル)であることが明らかになった。野尻湖の音波探査記録の解析では、過去約4.5万年間で最大で20m以上に及ぶ湖水面変動が8回存在することが明らかになった。さらに、湖水面上昇期は北大西洋で発見された急激な寒冷化イベント(ハインリッヒイベント)時とよく一致することが明らかになった。これまで日本列島の水収支は温暖化とともにプラス側に偏ると考えられてきたが、この成果は正反対であり、注目に値する。寒冷期に湖水面が上昇する原因として、寒冷化による降水量の減少やそれを補う蒸発量の減少を上回る冬季季節風の強化に伴う降雪量の増加を考えている。このような現象が日本列島全域で生じたのか、あるいは北陸地方に限られる現象なのか、これについてはさらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生物源シリカの分析は順調に進展している。音波探査記録の解析では野尻湖の記録解析で進展があった。琵琶湖の音波探査調査については次年度以降に実施することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
生物源シリカの分析については引き続き実施する。音波探査記録の取得については新たな機器導入の可能性が生じたのでそれを待って実施することとしたい。音波探査記録解析ソフトの導入が実現したので、記録のデジタル処理の可能性が開けた。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最近の国際的研究動向の進展からハインリッヒイベントやダンスガード・オシュガーサイクルとの対応においては現行よりさらに高分解能の分析が必要になってきた。そのため、高島沖ボーリング地点においてピストンコア試料を採取し、さらに高分解能の分析を実施することとした。試料採取に関しては1年分の研究費では不足であるので2年分の研究費で試料を採取することとした。試料採取には高知大学岡村真先生の研究グループの協力が得られることになった。
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