2012 Fiscal Year Research-status Report
高分解能琵琶湖古環境変遷記録との対比による東アジアモンスーン変動メカニズム解明
Project/Area Number |
23540536
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井内 美郎 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00294786)
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Keywords | 水収支 / 気候変動 / 湖沼 / 堆積物 / 生物源シリカ / 音波探査 / 琵琶湖 / 野尻湖 |
Research Abstract |
本年度は高島沖掘削堆積物の年代モデル改善に大きな前進があった。これまで高島沖コアの深度ー年代曲線は広域テフラの公称年代に大きく依存してきた。最近の研究の進展により地球規模でのイベントの発生順序が議論できる程度に詳細な分析を行えるようになってきたが、おおもとの堆積年代に関してはやや根拠が弱いと判断されるようになってきた。それは論文投稿した際に査読者の多くが指摘するところでもあった。このようなことから、高島沖掘削地点で試料を採取しなおすこととした。高知大学の岡村教授・松岡准教授の協力を得て、高島沖掘削点で3本のピストンコア試料(試料長約16m)を採取し、含水率測定と炭素14年代測定を行った。その結果、新たな深度ー年代曲線を確立することができた。従来の深度ー年代曲線ではほぼ直線的な関係が想定されていたが、今回の測定の結果、3回以上の低堆積速度から高堆積速度へと徐々に変化するサイクルが確認でき、そのうちの2回は北緯65度の夏季日射量の変動と類似することが確認できた。25年度には粒度測定と全炭素・全窒素濃度測定を行い、高島沖掘削試料との対応を確定し、新たな深度ー年代曲線に基づき生物源シリカ濃度の変化を基にした気候変動メカニズムを検討する予定である。 音波探査記録を基にした湖水面変動の検討に関しては、既存のアナログデータをデジタル化してさらに詳細な検討を開始したところである。湖水面変動のメカニズムとして構造運動によるものと気候変動によるものが想定され、琵琶湖では前者によるものという説が一般的であるが、音波探査記録の解析によって湖水面低下の証拠が得られつつある。つまり、構造運動による沈降のみでは説明のつかない現象が確認されたことになる。これに関しては解析をさらに進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
琵琶湖高島沖でピストンコア試料を採取できたことにより深度ー年代モデルの大幅な改善が図られることになった。その結果、さらに時間分解能をあげた議論が可能になった。音波探査記録のデジタル変換が可能になったことにより探査記録のより詳細な解析が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
生物源シリカ濃度測定に関しては継続して実施する。音波探査記録に関しては、デジタル化した記録を基にさらに解析作業を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度実施予定の堆積物年代測定に関しては昨年度先行実施した。本年度は新たな深度ー年代曲線の確立を目指す。
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