2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23540545
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
高橋 修 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20242232)
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Keywords | 放散虫 / 硫酸ストロンチウム / シリカ / 骨殻 / 被殻 / 共生藻 / 渦鞭毛藻 |
Research Abstract |
1)放散虫のいくつかの種(ポリキスティネアの群体性の1種,単体性の2種,およびアカンサリアの数種)において,被殻成分と遊走子の保持する結晶の成分を明らかにする事ができ,その成果を海外学術雑誌に投稿した(雑誌論文参照). 分子系統上で放散虫の系統の初期に分岐するアカンサリアとポリキスティネアがその発生初期に硫酸ストロンチウムの結晶をもつことは,両者共に硫酸ストロンチウムを固定する能力があり,とくにポリキスティネアは成長の段階で硫酸ストロンチウムからシリカへと骨殻形成に使う成分の発現をスイッチさせている可能性が考えられた.これら骨殻形成の進化やその生物学的なしくみを明らかにすることは,生物圏のシリカやストロンチウムの循環を考察する上で重要な知見をもたらすものと考える. 2)放散虫数種に関して,その共生体(共生藻)の普遍性が明らかになった(現在投稿中).放散虫には,少なくとも2種類の渦鞭毛藻が共生していること,それらの一つは1800年代から報告されているZooxantellaに属するもので,もう一つは新種であることがわかった.そのいずれにおいても,遊走子のサイズが数μmであるのに対し,共生藻の大きさはそれよりも大きく,放散虫は有性生殖では子孫に共生藻を受け渡すことは不可能であると結論づけた. 葉緑体のオルガネラ化については多くの生物学者の興味が注がれているが,放散虫と藻類のような緩い関係,つまり一世代限りの,世代間の受け渡しも分裂が同調することもない共生の形態はあまり興味の対象にはなっていなかった.今後は,汎世界的な規模や多くの個体で放散虫と共生体(藻)の関係を明らかにし,化石記録からの情報と組み合わせて考察することで,海洋における生物の共生系の進化の一つのモデルを構築することが可能であると考えている.
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