2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540546
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
天野 和孝 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (50159456)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 化学合成群集 / 新生代 / オウナガイ / シロウリガイ類 / シンカイヒバリガイ |
Research Abstract |
研究計画に沿い、北海道道央の始新統幌内層の化石を採集し、リストを作成した。その結果、幌内層の化石群集ではオウナガイ類とシロウリガイ類が卓越し、多歯類二枚貝、肉食・腐肉食性の巻貝類が付随する事が判明した。また、ツキガイ類をほとんど伴わない事も明らかとなった。さらに、和歌山県漸新統牟婁層群の化石を検討し、リストを作成した。幌内層の群集と類似するものの、北海道の漸新統縫別層の群集と同様にシンカイヒバリガイ類が加わる事も明らかとなった。したがって、日本では少なくとも後期始新世にオウナガイ類の卓越する群集にシロウリガイ類が加わり、前期漸新世にこうした群集にシンカイヒバリガイ類が新たに加わった可能性が示唆される。 ドイツのゲッチンゲン大学では北米産のシンカイヒバリガイ類を検討した。その結果、シンカイヒバリガイ類に近縁な仲間が中期始新世には出現していたものの、多様化し、日本付近まで分布を広げた時期は始新世末期~前期漸新世であることを明らかにした。この成果は論文化し、国際誌に投稿中である。イギリスのリーズ大学では世界各地の化学合成群集化石標本を検討した。その結果、これまで世界唯一の暁新世の化学合成群集とされてきた北米パノーチェ丘陵の群集が化学合成群集ではない事を明らかにした。また、南極の白亜紀末期から世界最古のオウナガイ属を認め、オウナガイ類が卓越する群集は白亜紀末期に出現したことも明らかにした。ニュージーランドのオークランド大学では、ニュージーランドの中新世の化学合成群集を採集検討した。その結果、シンカイヒバリガイ類、シロウリガイ類が卓越し、オウナガイ類の代わりにハナシガイ類、ツキガイ類が随伴する事が明らかとなった。以上から、世界的にもオウナガイ類の卓越する群集に、始新世にシロウリガイ類が、漸新世にシンカイヒバリガイ類が加わって、新生代型の化学合成群集が形成されてきたことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定されていた幌内層、牟婁層群の貝化石の同定を終了し、日本での新生代型化学合成群集の形成過程がおおよそ判明した。ゲッチンゲン大学では、シンカイヒバリガイ類の多様化が生じたのは始新世末期~前期漸新世であることを明らかにし、その成果を論文化した。リーズ大学ではこれまで世界唯一の暁新世の化学合成群集とされてきた北米パノーチェ丘陵の群集が化学合成群集ではない事を明らかにした。このことは、平成24年度に調査を予定している北海道の根室層群で、化学合成群集が発見されれば、世界唯一の暁新世の化学合成群集となり、白亜紀から始新世に至る化学合成群集の進化を知る大きな手がかりとなることを意味している。オークランド大学では、日本にも多く見られる中新世の化学合成群集を検討し、日本と若干異なる事を明らかにした。このことは、新生代型の化学合成群集の多様化が中新世に顕著になった可能性を示唆している。以上から、平成23年度の本研究の目的はほぼ達成され、研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進んでいるため、当初の予定通りに、平成24年度は北海道道東の暁新統根室層群上部の化学合成群集発見につとめるとともに、漸新統縫別層産貝化石について詳細に検討を進める。化石を採集・整理し、模式標本等と比較検討を行う。また、ニュージーランドで採集された貝化石について検討し、分類に関する論文化を進める。今のところ、シロウリガイ類で、新属新種が発見されている。また、ニュジーランドの調査で発見された捕食に関連した化石について、論文化を進めるとともに、北海道北部中川町の白亜紀の化石を検討する。また、ドイツで検討したシンカイヒバリガイに関する成果やニュージーランドのシロウリガイ類、ハナシガイ類化石を検討した成果を日本古生物学会で発表する。平成25年度はこれまでの成果を総括し、リストを作成するとともにリストに基づいて群集構造面での検討を行い、新生代型の化学合成群集の出現について古生態学的な要因について検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度も北海道東部、北部の調査を行う。また、研究成果を日本古生物学会で2回発表する。このための旅費が70万円ほどかかる。さらに、調査のための消耗品費(10万円)、その他としてレンタカー代など20万円を予定している。また、調査後の化石試料の整理に謝金を10万円使用する予定である。
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