2012 Fiscal Year Research-status Report
メタン湧水場の地下断面を復元する~化学合成群集が指標する湧水のさまざまな活動様式
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23540548
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
延原 尊美 静岡大学, 教育学部, 教授 (30262843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井尻 暁 独立行政法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 研究員 (70374212)
石村 豊穂 茨城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (80422012)
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Keywords | 層位・古生物学 / 化学合成生態系 / メタン湧水 / 深海生物 / 白亜紀 / 新生代 / 進化 / 海洋生態 |
Research Abstract |
北海道の中新統望来層に関して,昨年度予備調査を行った海崖露頭にて,懸垂下降による調査を行い,崖上部に露出する湧水性石灰岩体の規模,形状,岩相および内部構造,化石産状について記載を行った.この海崖では,層厚20m以上にもわたる硬軟泥岩互層が露出しており,メタン湧水の地下構造およびその活動履歴を追跡できる.調査の結果,以下の事実が確認された. 1.湧水性石灰岩体は層理面に挟在するレンズ状の形態をなしている. 2.石灰岩体内部には石灰化の続成作用による収縮裂開や破断が認められるが,周囲の泥岩には流動や破砕を示す組織は存在しない. これらのことから,望来層の湧水は,高間隙水圧による地下破壊的な性質ではなく,広い範囲に拡散する滲みだし的な性質であったことが判明した.また,化石密集層の形状や化石産状(合弁率や埋積姿勢等)を詳細に調査した結果,シロウリガイ類のコロニーが原地でそのまま乱泥流によって埋積され化石化したことも判明した.望来層の化学合成群集は活発な移動能力を有するシロウリガイ類で優占されるが,その化石群集の分類構成は,湧水経路が不安定であることだけでなく,乱泥流のような急速な埋積撹乱が頻繁に起きていることにも規制されることが示唆された. 以上のように,湧水性化学合成群集の群集構成は,湧水の挙動性質だけでなく,生息場における堆積様式にもコントロールされている可能性がある.このことを確認するために,相模湾初島沖における現生シロウリガイ類コロニーの連続ビデオ画像の解析も行い,乱泥流による埋積時の活発なシロウリガイ類の行動様式を明らかにした.これらの成果については学会発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道の中新統望来層の海崖露頭について,詳細な露頭スケッチと化石産状の観察のため,当初は足場建設を行う予定であったが,地盤の不安定さ等の理由から,崖上からの懸垂下降調査に切り替えて調査を行った.結果として,広範囲に崖上部を調査することができ,複数の岩体について内部構造およびその周辺の露頭スケッチや,化石産状の観察・撮影,分析用の岩石サンプルの採集まで予定以上の基礎データを得ることができた.その結果,湧水の挙動およびシロウリガイ類コロニーの埋積プロセスについて,広範囲に拡散する滲みだし的湧水が乱泥流によって断続的に中断されるというモデルをたてることができた.一部のデータは,本年2月の古生物学会で予察的な報告を行ったが,より詳細な報告を本年5月の地球惑星科学連合大会で発表予定である. また,湧水の挙動変化や乱泥流の埋積作用に対するシロウリガイ類の反応を確認するためには,現在の化学合成生物群集についての基礎データを収集・整理する必要があるが,昨年度来すすめてきた,初島沖総合観測ステーションの連続静止画像の解析がほぼ終了した.これまで知られていなかったシロウリガイ類の移動方法や速度が解析できた.これらのついては,すでに一部を学会発表し,現在投稿準備を進めている. 上記の化石および現生の群集についてのデータを比較することで,湧水性化学合成群集の分類構成が湧水挙動や生息場の堆積学的性質に規定されるモデルを提示できる段階に来たといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査で採取した北海道の始新統幌内層および望来層,沖縄本島新里層の石灰質岩体の試料について,研磨断面および岩石薄片を作成し,顕微鏡下における組織の観察を行う.またXRDによる鉱物種の特定と炭素・酸素安定同位体比の測定を行う.また,その他の地域の現生・化石双方の化学合成群集の炭酸塩岩および生物試料の補足調査も必要に応じて行い,湧水経路が拡散的な滲みだし型(望来層,満水層など)と経路集中型(別所層など)との間にみられる,岩石組織(破砕・流動構造),鉱物種とその安定同位体比の違いを記載し,湧水挙動と石灰質岩体の岩石組織との対応関係について解析する.これらの成果を,再びフィールドの観察成果に還元して,化学合成二枚貝化石の産状との対応関係がわかる露頭マップを完成させ,湧水活動の地下断面と海底表面の群集との対応モデルを提示する. また,現生のシロウリガイ類の行動は,湧水弱体化への応答や急速埋積作用からの脱出など,上記の対応モデルを提示する上で鍵を握っている.この2年間継続して行っている初島沖総合観測ステーションでの画像解析のデータや,調査航海で行ったシロウリガイ類の人工埋積実験などのデータを化石産状と照らし合わせ,化石化のプロセスや過去の生息場を復元する. 以上をもとに,シロウリガイ類が新生代に急速に反映した背景を探るために,湧水の挙動様式のバリエーションを明らかにした上で,それらへのシロウリガイ類の広範囲な適応能力を証明する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに野外調査を行ったフィールドでの補足調査のため,旅費,および現地でのレンタカー借用料金を使用する.主要な調査候補地としては,高知県の白亜系中村層,北海道の始新統幌内層および中新統望来層,茨城県の鮮新統九面層,沖縄県の鮮新統新里層である.また,適宜,学会等での成果発表を行うための旅費も使用する. 物品・消耗品に関しては,化石試料の整形ツールの部品交換や整理用標本ケース等の補填,顕微鏡を使用した画像解析のための機器・消耗品やソフトウエアの購入に使用する.資料整理にあたっては,専門的な知識を有する学生・大学院生の補助作業者を雇用するため謝金を使用する.研究分担者には,採集試料の炭素・酸素安定同位体比の分析のための物品・消耗品を購入するための費用を,また必要に応じて現地調査に参加し,現地での討論が可能なように,またそれぞれの成果を発表し議論できるよう,旅費も計上した. なお,成果公表に必要な校閲料や投稿料,別刷印刷料も使用予定である.
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Biogeochemical processes involving acetate in sub-seafloor sediments from the Bering Sea shelf break2012
Author(s)
Ijiri, A., Harada, N., Hirota, A., Tsunogai, U., Ogawa, N.O., Itaki, T., Khim, B-K., Uchida, M
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Journal Title
Organic Geochemistry
Volume: 48
Pages: 47-55
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Variation in stable carbon and oxygen isotopes of individual benthic foraminifera: tracers for quantifying the magnitude of isotopic disequilibrium.2012
Author(s)
Ishimura, T., Tsunogai, U., Hasegawa, S., Nakagawa, F., Oi, T., Kitazato, H., Suga, H., Toyofuku, T.
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Journal Title
Biogeosciences
Volume: 9
Pages: 4353-4367
DOI
Peer Reviewed
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