2013 Fiscal Year Annual Research Report
貝殻形態の異質性にかかるバイアスの評価と不偏な形態空間の探索
Project/Area Number |
23540549
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
生形 貴男 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00293598)
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Keywords | 異質性 / 多様性 / 形態空間 |
Research Abstract |
一般に,古生物の多様性は,分類群数に基づく豊富度によって評価される.これに対して,形態的多様性を表す異質性は,主に形態間の差異に基づく形態的非類似度によって評価されてきた.しかしながら,豊富度と非類似度のどちらの尺度を用いるかによって,同じサンプルでも多様度や異質度の評価は異なってしまう.そこで,形態の豊富度を表す尺度を新たに考案し,異質性を従来型の分類学的多様度性と同じ土俵で比較する方法を検討した. まず,形態的豊富度を定義するために,形質状態毎の頻度分布をカーネル密度推定によって見積もる方法を考案した.具体的には,形態空間における観測された形態の近傍について,多次元ガウス分布を使った確率密度を考え,その確率密度のベイズ95%最高密度区間を形態空間超平面へ投影した面積が形態空間全体に占める割合によって,形態的豊富度を定義した.一方,化石記録の不完全性のため,データのサンプルサイズも時代毎に異なってしまい,それらをそのまま比較するとサンプルサイズが大きいものほど多様性が高くなってしまう.そこで,時代毎に異なるサンプリング密度の影響を補正するために,Alroy (2010)の定足率充足法による無作為再抽出法を形態的豊富度に応用して,サインプルサイズ効果を除去する方法を考案した. 以上のように定義した形態的豊富度を用いて,古生代アンモノイドのオンライン・データベースに登録されているペルム紀及び三畳紀初期のアンモノイド861種について,期毎の異質性変動を評価した.三つの形状変数の値を求め,それぞれが標準正規分布に近似的に従うように変換して,上記の形態的豊富度と従来の形態的非類似度を比較した.その結果,ペルム紀後期のG/L境界及びペルム紀/三畳紀境界の大量絶滅事変とその後の回復期において,それぞれアンモノイドの殻の外形に対して異なる選択圧がかかっていたことが示唆された.
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