2011 Fiscal Year Research-status Report
大陸地殻を持つ沈み込み帯における地殻溶融によるマグマ発生過程の解明
Project/Area Number |
23540555
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 克哉 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (40335229)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 火山 / 大陸地殻 / 地殻内マグマ過程 / 地殻溶融 / 物理モデル / 数値実験 / 大規模珪長質マグマ活動 / 島弧安山岩火山 |
Research Abstract |
大陸地殻縁の沈み込み帯においては,玄武岩質から流紋岩質まで幅広い組成のマグマが活動し,それらマグマの発生にとって地殻溶融プロセスが重要であると考えられる.本研究では,物理モデルと実際の火山の噴火史およびマグマ組成のデータのコンパイルにより,地殻溶融によるマグマの生成量,組成,生成時間を理解し,地殻内過程が関与したマグマの多様性生成の物理プロセスを定量的に理解することが目的である.平成23年度では,地殻溶融の物理モデルによる数値実験を行うために,地殻の組成,初期温度,圧力をパラメータとして,液相分率,メルト組成,固相組成の関数化を行った. さらに,従来の高温マグマの貫入による地殻溶融の一次元モデルモデルの拡張を行い,繰り返しのマグマ貫入,マグマ結晶化に伴う水の吐き出しの効果を考慮した計算機コードを作成した.このコードを用いて計算を行った結果,(1)地殻溶融によるマグマの生成は,時間的進展に伴いに3つのステージにおいて推移すること, (2)地殻溶融マグマの生成量は基本的に熱源マグマの貫入率により決定されること,(3)水量が多い条件下では低部分溶融度の地殻溶融マグマが多く生成すること,(4)低部分溶融度の地殻溶融マグマは数万年の時間スケールで最大量になること,などを明らかにした.また,実際の火山のデータコンパイルにおいて,東北日本のいくつか(十和田,猫魔,磐梯など)の文献調査を行った.その結果,噴火ステージによる地球化学的性質の変遷が見られる一方,各ステージではマグマの主成分組成が多様でも同位体比の変化がない場合があり,その場合,地表に噴出するマグマはもっぱら地殻溶融により生成したものと解釈でき,このことはマグマ成因における地殻内過程の重要性を示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の目標は,(1)地殻溶融の物理モデルの数値計算のため,地殻物質の溶融性質を関数化すること,(2)従来の地殻溶融モデルを,繰り返し起こる熱源マグマ貫入と水の移動効果を加えたモデルへと発展させること,(3)いくつかの実際の火山を対象にデータのコンパイルを行うこと,であった.このことは,おおむね当該年度においてなされており,本研究はおおむね順調に推移していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして,数値計算機コードとその結果の妥当性を厳密に検討し,物理モデル,数値計算結果をまとめ,固液分離が起こらない場合の,地殻溶融過程によるマグマの生成に関して,その性質(量,時間スケール,組成,岩石学的性質)に関するまとめを行う.そのうえで,より現実的なモデルとするため,メルトの上下方向の密度逆転によるAFCや混合が発生する効果,結晶沈降則(Martin & Nokes, 1988)などをモデルに取り入れたさらなるコードの改良を目指す.また,前年度に引き続いて,天然火山の地質学的,岩石学的データのコンパイルを行う.この年度では,大規模珪長質マグマ活動の火山,安山岩マグマを主体とする東北日本の火山に関する文献調査を増やすとともに,玄武岩質マグマの活動が卓越する伊豆弧の火山に関するコンパイルを行う.さらに,物理モデルによる結果,コンパイルデータなどがある程度まとまった形になるので,随時,それらの関係における検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究応募段階で計画していた国際学会に,大学本務の都合上出席を見合わせた.その結果,一部の交付金を次年度に繰り越した.これら残金は,次年度における学会出張および研究作業の補助をしてもらうための謝金として,使用する予定である.
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