2011 Fiscal Year Research-status Report
高温高圧下での時間分解ラマン分光測定によるケイ酸塩の準安定相転移
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23540558
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
富岡 尚敬 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (30335418)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥地 拓生 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (40303599)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ラマン分光 / ダイヤモンドアンビル / 高温高圧実験 / 水素拡散 / ブルーサイト |
Research Abstract |
本研究課題の開始前に立ち上げた予備的な顕微ラマンシステムでは、励起用のグリーンレーザー(532 nm)の出力が10 mWしかなく、十分な強度のラマンスペクトル得ることができなかった。そこで、グリーンレーザーを出力100 mWのものに更新した。また、試料に入射するレーザー系を小さくし、より高い空間分解能とラマンスペクトル強度を確保するために、ビームエキスパンダーと開口数の大きい対物レンズの導入を行った。この結果、直径2ミクロンの領域から効率よくラマンスペクトルを取得することが可能となった。 今年度はこのシステムを用い、地球内部に存在する含水鉱物の基本ユニットであるブルーサイト[Mg(OH)2]の、高温高圧下で水素(H)―重水素(D)の相互拡散係数の決定を行った。水素同位組成既知のブルーサイト試料のラマン分光測定から、D/H比とOH, OD伸縮振動ピークの強度比の相関を得た。高温高圧下での拡散実験は、外熱式ダイヤモンドアンビル(1.8 GPa, 573 K)、川井型マルチアンビル高圧装置(3-15 GPa, 750-1050 K)を用いて行った。 その結果、H-D相互拡散係数は、1.573 Kという最も低温の実験においても10-15 (m2/s)と大きな値を持つこと、2.C軸に垂直な方向では、C軸に平行な方向に比べて一桁大きいこと、3.Dに富むブルーサイト中に対し、Hに富むブルーサイト中では4倍ほど大きいこと、が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな高出力グリーンレーザーの導入などのラマン分光システムの改良を行い、水酸基の伸縮振動ピークの様に強度の大きいラマンピークの測定に十分な可能なスペックが達成された。高温高圧下の回収試料について、このシステムを用いたブルーサイト中の水素ー重水素拡散プロファイル測定と相互拡散係数の決定を行うことに成功し、地殻の温度圧力条件下での含水岩石中の水素移動が非常に速いことを実験的に検証することができた。一方で、ダイヤモンドアンビル中の試料については、十分なS/N比のラマンスペクトルを得ることができておらず、今年度光学系の最適化を進めるという課題が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
現状の顕微ラマンシステムは、水酸基の伸縮振動ピークの様に強度の大きいラマンピークの測定は十分に可能なスペックではあるが、これに比べ強度の小さいケイ酸塩鉱物のピークを明瞭に測定できる状況ではない。そこで、迷光の除去など光学系の見直しと改良を図り、ケイ酸塩試料をそのままで、更に、ダイヤモンドアンビルセル中で測定ができるようにする。重水素化したブルーサイトの高圧その場ラマン分光測定を行い、高圧下での水酸基の伸縮振動の挙動を観察する。今年度はJ-PARCにおいてブルーサイトの高圧下でのその場中性子回折実験を予定しており、その結果と合わせてブルーサイトの高圧下での結晶構造変化を議論する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費:ダイヤモンドアンビル試料中で目的の部位を正確に位置決めしてラマン分光測定を行うため、移動ステップが1ミクロンの精密自動X,Yステージの導入を行う。消耗品費:高温高圧実験では、ダイヤモンドアンビルセル、光学顕微鏡対物レンズ、試料加熱用ヒーターの消耗が大きいため、それぞれ予備の購入を予定している。旅費:研究成果を発信・議論するため、国内学会に年2回程度参加するのに用いる。
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