2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540565
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
森下 祐一 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, マグマ熱水鉱床研究グループ長 (90358185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
比屋根 肇 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70192292)
後藤 孝介 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究員 (30612171)
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Keywords | 国際情報交換 / 南アフリカ共和国 / 金鉱床 / 白金族鉱床 / SIMS / レアメタル |
Research Abstract |
本研究では、SIMS微小領域分析手法等を用いて、鉱石中の金、白金族元素の存在形態を解明する。鉱石中白金族元素のSIMS分析を行う際に固体標準試料が必要だが、白金族のような微量元素では均質な標準試料が得られないため、イオン注入試料を作成して用いた。本研究では白金族鉱石に含まれる3つの硫化鉱物である磁硫鉄鉱、ペントランド鉱、黄銅鉱に1平方cm当たり3E14個のプラチナ(Pt)を1.3MeVでイオン注入した。全Ptのイオン注入量は正確に計測されるが、金と異なり6個の同位体を持つPtでは、イオン注入における同位体組成は明らかではない。そこで、イオン注入の際にシリコンウエファにも同量のPtを注入しておき、その同位体組成をSIMSで正確に求めた。一方、未知試料の硫化鉱物では様々な妨害分子イオンがあるため、6個の同位体のうちその影響が最も少ない195Ptを測定し、標準試料の同位体組成からPt濃度を計算で求めた。 ブッシュフェルト(Bushveld)複合岩体東部地区にあるツーリバーズ白金族鉱床のボーリングコアから得た硫化鉱物では、磁硫鉄鉱と黄銅鉱のPt濃度は1ppm以下だったが、ペントランド鉱では数十ppmに達した。Ptの存在形態は比較的均質で、金鉱石で見られたナノ粒子は白金族鉱石では認められず、また硫化鉱物粒のコアとリムにおいて濃度の差異はなかった。比較のため、ブッシュフェルト北部地区の白金族鉱石の分析を行ったが、鉱物へのPtの濃集傾向は同様であった。 SIMS分析に関しては軌道に乗ったが、成因を解明するためには組織的な分析が必要である。南アフリカ共和国の研究協力者と連携し、ブッシュフェルト東部地区のボーリングコアから連続サンプリングを行い、コアの代表的な箇所を入手した。その試料から研磨薄片を作成すると共に、依頼分析によりバルク分析値を得てSIMS分析のための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白金族元素のうち重要なPtとパラジウム(Pd)のSIMS分析はいずれも可能になったが、Pdについては更なる分析条件の検討が必要との結論に至った。昨年度開始したPd分析に使う標準試料は、注入深度をPtと同程度にするため、Ptより軽いPdは低エネルギーの0.8MeVで作成したが、Ptと同様の方法で標準試料の同位体組成を測定した。PdはPtと同様に6個の同位体を持つが、どの同位体にも妨害分子イオンが乗るため、本年度はエネルギーフィルター法の改良を行うなどPd分析法の検討を行った。鉱石に含まれる硫化鉱物の種類により陽イオンが異なり、生成する妨害分子イオンも異なるため、それぞれについてピークの形を詳細に測定した。測定する同位体は105Pdと110Pdについて検討したが、低い電圧をかけたエネルギーフィルター法で105Pdを測定する方法がもっとも信頼性が高いことを見いだした。 これにより、分析に関しては所期の目標が達成できた。また、鉱石試料に関しても組織的な分析が可能となるような準備を行ったため、最終年度に向けての達成度は十分であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに金、Pt、PdについてのSIMS分析手法が確立した。一方、金鉱床と白金族鉱床から試料採取を行い、分析用試料の組織的な作成と全岩分析値を準備しており、これまでに得られた分析値を勘案しながら重要な試料についてのSIMS分析を行うことにしている。 白金族のPtとPdは磁硫鉄鉱と黄銅鉱に比べてペントランド鉱に濃集することは共通だが、Pdの方がより多くペントランド鉱に濃集しており、濃度の不均質も大きい。今後の研究では、この分析結果と鉱床成因との関係を明らかにすべきであると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に調製した鉱石試料のSIMS分析を行うための旅費や実験消耗品などの経費に使用する。次年度が最終年度であるため、測定データの解釈と結論に導くための討論が必要な段階となる。研究分担者や南アフリカ共和国における研究協力者との議論の他、本研究に関連する分野の専門家との討論も積極的に行う予定である。 また、当初計画通りに国際研究集会で研究成果を発表して討論するための旅費として使用する他、論文作成を行うこととする。
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