2012 Fiscal Year Research-status Report
鉱物-珪酸塩メルト間元素分配挙動に対する圧力効果の解明
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23540566
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 敏弘 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 技術研究副主幹 (40235974)
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Keywords | 超高圧 / 珪酸塩メルト / 鉱物 / 元素分配 / 微量元素 |
Research Abstract |
前年度までに行ったザクロ石系の研究結果で、最も大きな圧力依存性を示すのは1価イオン群であった。しかし、ザクロ石では非常に大きなイオン半径を持つ元素は結晶中の存在量がLA-ICP-MS測定の検出限界以下であったため、分配係数を測定できた1価イオンはLi、Na、Kの三元素だけであった。そこで24年度は非常に大きなイオン半径を持つRb、Csの分配係数も測定可能なCaを主成分とする鉱物と珪酸塩メルト間の元素分配係数を超高圧力下で測定した。 数種類のCaを主成分とする鉱物を用いて実験を行ったが、Merwiniteは常圧から17万気圧付近まで安定に存在し、分配係数の圧力依存性を測定する事が出来た。Ca-perovskiteもRb、Csの分配係数を測定できたが、珪酸塩メルトと安定に共存する圧力が16万気圧以上であり、分配係数を測定できた圧力範囲が狭いため、圧力依存性を明確にするには至っていない。 Merwinite-珪酸塩メルト間の元素分配係数測定からも、1価イオン群が最も大きな圧力依存性を示す事が分かった。2価、3価イオン群では分配係数が最大となる元素は圧力が変化しても同じであった。しかし、1価イオンの場合は常圧付近ではNaであるが、15万気圧以上になるとKが最大値を示すようになった。このように圧力が上昇すると1価イオン群では大きなイオン半径を持つ元素ほど分配係数が大きくなる傾向は、ザクロ石での測定結果と一致するだけではなく、測定可能圧力範囲などの制限で詳しい解析が難しい他の鉱物で観測されている結果とも整合的である。このため、圧力の上昇とともに1価イオン群では大きなイオン半径を持つ元素ほど分配係数が増加する事は、どのような鉱物でも共通した現象であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ザクロ石-珪酸塩メルト系の超高圧実験では、1価イオン群の元素分配係数に対する圧力依存性について不明瞭な部分が残っていたが、Merwinite-珪酸塩メルト間の元素分配係数測定を行う事で、圧力依存性を明確化する事が出来た。得られた結果は、他の鉱物と珪酸塩メルト間で測定されていた元素分配挙動とも整合的であり、地球深部での元素分配挙動を推察する基礎データを得る事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
地球下部マントルの主要構成鉱物であるMg-perovskiteは23万気圧以上の超高圧力下においてのみ存在するが、現段階では微量元素の分配係数を測定できる最大圧力は約20万気圧にとどまっているため、現状のままではMg-perovskite-珪酸塩メルト間の元素分配係数を測定できない。これは圧力が高くなるほど試料用器が薄くなるために、外部から汚染物質が混入する事が原因であるが、試料用器の材質を工夫する事により、この問題点は解決できる見込みである。このため、今後は測定可能な圧力を30万気圧付近まで拡大し、Mg-perovskiteやCa-perovskiteと珪酸塩メルト間の元素分配係数の測定を行う。こうして得られた結果を、これまでに得られている元素分配挙動に対する圧力依存性の結果を用いて、100万気圧を超える地球深部での元素分配挙動の推定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後も、超高圧実験に必要な消耗品である、超硬合金アンビル、MgO圧力媒体、試料容器用の貴金属の購入などに研究費を充てる。
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Research Products
(1 results)