2013 Fiscal Year Research-status Report
SIMSによる初期太陽系における親鉄性元素の分別に関する研究
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23540567
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
比屋根 肇 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70192292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 祐一 静岡大学, 理学研究科, 教授(Professor) (90358185)
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Keywords | 二次イオン質量分析計 / 親鉄性元素 / 元素分別 / 隕石 / 相対感度係数 / 同位体異常 / 包有物 |
Research Abstract |
本年度は、分析可能な親鉄性元素の種類を増やすべく、新たに数個の合金試料を作成した。また、昨年度明らかになった、分析における親鉄性元素のピーク位置が元素の質量範囲によって変動する問題(マグネットのヒステリシスによるもの)を解決するため、ピーク位置決め用のスタンダードをひとつ作成した。これは、既に作成してあった数個のスタンダード(いずれも鉄が主体で親鉄性元素を微量に含む合金試料)を混合し、再溶融して作成したものである。これにより、各合金に含まれていたいずれの親鉄性元素についても、このスタンダード一つだけでピークの位置決めをすることが可能になった。本年度は、これら合金試料を用いて、白金族元素を含む多くの親鉄性元素について、引き続きSIMSによる定量分析の基礎実験をおこなった。昨年度におこなった、一次イオンとして酸素(O-)ビームを用いた分析に加え、セシウム(Cs+)ビームを用いた分析もおこない、それぞれの場合についての「相対感度係数」を多くの親鉄元素について求めた。また、実際の隕石試料として、Y-81020 隕石(CO3.05)中のコンドルール内の金属粒子についてSIMS分析を試みた。さらに、マーチソン隕石から分離したヒボナイトを含む包有物のうち、超難揮発性の金属微粒子を含んだ包有物二つについて、さらに分析を進め、その成因・生成条件を明らかにした。これら二つの包有物に対する酸素同位体局所分析にも成功し、酸素にも大きな質量依存同位体分別が見られることを示した。また、カルシウム、チタンの同位体組成に関して、分析技術に改良を加え、より高精度の同位体異常の分析に成功した。これらの結果をもとに、包有物の成因・生成条件について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25年度において、装置のトラブルその他の理由により、分析に大幅な遅れが生じた。まず、主要な分析装置であるSIMSについて、平成25年6月に真空制御ユニットの不具合、10月に検出器の動作不良、11月にマイクロチャンネルプレート電源の不具合が発生した。さらに12月には、震災後の建物補修工事と関連して、装置に付属した冷却水循環装置室外機が設置してある地盤の補修工事が必要になり、装置の一時シャットダウンを余儀なくされた。このように、装置が使用できない状況がたびたび発生したため、分析スケジュールに遅れが生じ、年度内に研究が完了できなくなった。そのため、研究期間を1年延長する申請をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に発生した装置の不具合等の問題は、現在ほとんど解消され、今後は順調に分析を進めることが可能である。したがって、今年度は、主として、実際の隕石試料中のメタルにおける親鉄性元素存在度の詳細な分析に取り組む。とくにコンドルール中のメタル粒子、CAI中のメタル粒子などに注目しつつ分析を進める。また、希土類元素分析を組み合わせることにより親鉄元素と親石元素における分別パターンの比較をおこなうとともに、同位体分析を並行しておこなうことにより物質の素性についての情報を得る。これらの結果を総合することにより、原始太陽系星雲内における親鉄性元素分別の様子を明らかにし、原始太陽系星雲の温度構造、物質の移動、物質進化に関して考察を深める。また、マーチソン隕石中から見つかった超難揮発性金属微粒子を含むヒボナイト包有物の研究については、SIMS分析および結果の解析をほぼ終えており、論文を完成させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主要な分析装置であるSIMSについて、平成25年6月に真空制御ユニットの不具合、10月に検出器の動作不良、11月にマイクロチャンネルプレート電源の不具合が発生し、さらに12月には冷却水循環装置室外機の地盤補修工事が必要になるなど、装置が使用できない状況がたびたび発生した。そのため、分析スケジュールに遅れが生じ、年度内に研究が完了できなくなった。そのため、研究期間を1年延長する申請をおこなった。 研究費の使途は、平成25年度の当初計画と同様、物品費と旅費が主なものである。物品費としての主な使途は、SIMS関連の消耗品費、隕石試料作成に必要な消耗品費などである。旅費は、東京大学から分析装置のある産業技術総合研究所(つくば市)までの旅費、および学会等への旅費として使用する。
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Research Products
(7 results)