2012 Fiscal Year Research-status Report
マイクロプラズマ散逸ソリトンの安定生成とプラズマフォトニック結晶
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23540570
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
向川 政治 岩手大学, 工学部, 准教授 (60333754)
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Keywords | プラズマ / 自己組織化 / プラズマフォトニック結晶 |
Research Abstract |
本研究では、マイクロギャップ誘電体バリア放電を用いて、空間対称性を有し局在性の高い自己組織構造である散逸ソリトン(Dissipative Soliton)を生成し、この安定性の向上と持続時間の増大化を目的としている。また、この自己組織構造をプラズマフォトニック結晶とみなし、プラズマ屈折率の周期構造をマイクロプラズマの自己組織化で実現し、電磁波制御の効果を検証する。 平成24年度の研究では、散逸ソリトンの正味の維持時間を長くするため、マイクロギャップの並列化と放電タイミングの外部回路による制御と、誘電体表面への酸化マグネシウム(MgO)層の導入を試みた。また、反応拡散方程式を用いて自己組織構造の数値計算を行った。 タイミング制御の実験ではギャップ長140μmのマイクロギャップを2つ導入し、それぞれの回路の電流制御にはMOSトランジスタとPICを用い2つの回路がONとなるタイミングを制御したところ、それぞれの回路には六角構造とともにパルス幅0.35μsの放電電流が流れ、これらの電流の時間差は0.44μsとなり、正味維持時間は単パルスの場合の約2倍の0.7μsとなった。マイクロギャップの誘電体表面へMgO層を導入した実験では、非導入時と比べて放電開始電圧および最大放電電流が減少し、正味の放電維持時間は約20~50%増加した。これはMgOの導入の有無でプラズマへの投入エネルギーに変化がないという結果と整合性がある。自己組織構造の数値計算では、誘電体容量の変化に伴う六角構造の変化に着目し、放電の空間分布を求めた。昨年度に実験的に得られた放電構造と同様、誘電体容量の変化によるフィラメントの直径の変化はなく、誘電体容量の減少に伴ってフィラメント間距離は減少し、構造は微細化することがわかった。これにより、六角構造の格子定数は誘電体容量によって制御することが可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、マイクロギャップ誘電体バリア放電を用いて、空間対称性を有し局在性の高い自己組織構造である散逸ソリトン(Dissipative Soliton)を生成し、この安定性の向上と持続時間の増大化を目的としている。また、この自己組織構造をプラズマフォトニック結晶とみなし、プラズマ屈折率の周期構造をマイクロプラズマの自己組織化で実現し、電磁波制御の効果を検証する。科研費申請時の当初計画では、放電維持時間を延ばすための実験と、反応拡散方程式を用いての自己組織構造の数値計算は、年度ごとに実施項目を分けたが、実験と理論計算のシナジー効果を期待して平成23年度から同時進行させたため、現象に理解は深まっている。また、マイクロギャップの直列化・並列化と、放電のタイミングの外部回路による制御を、平成24年度に前倒しして実施したため、散逸ソリトンの正味の維持時間を長くすることに対し道筋が早めについた。プラズマ生成実験に必要な装置・実験室、その他のインフラはほぼ整っていたので、研究が極端に遅れる理由も特になかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、散逸ソリトンの正味の維持時間を長くすることが、マイクロギャップの並列化と酸化マグネシウム層の導入の2通りの方法でできたことを受けて、これらの方法を併せることで維持時間をどれだけ伸ばすことが可能かを実験的に検証するとともに、放電維持時間の長化が電磁波の伝搬に及ぼす効果を実験的に検討する。自己組織構造への電磁波の導入は、有効と思われる数十GHz周波数帯の電源の導入は困難であるので、代替として数GHz周波数帯のマイクロ波を用いて評価し、次年度以後の研究につなげていくことにする。また、本研究の先行研究(若手研究(B))からの継続課題であり平成24年度の課題でもあったが、BSOを用いた誘電体表面電荷の測定の実験結果をインプットデータとする自己組織構造の数値計算方法を模索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(10 results)