2012 Fiscal Year Research-status Report
ガス銃の衝突反応による炭素クラスター合成 ー宇宙炭素合成のモデル実験ー
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23540572
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
三重野 哲 静岡大学, 理学部, 教授 (50173993)
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Keywords | プラズマ化学 / 衝突反応 / 小惑星 / 炭素クラスター / タイタン / 炭素カプセル / アミノ酸合成 / 惑星・衛星の進化 |
Research Abstract |
ターゲット室内にセットする与圧室は正常に使われている。窒素1気圧を封入し、鉄ターゲット(氷+鉄ターゲット、氷+ヘキサン+鉄ターゲット)を設置できる。ターゲットは液体窒素で- 100 ℃程度まで冷却できる。ポリカーボネイト(ステンレス鋼)飛翔体はオリフィスのアルミフィルムを突き破って与圧室に入り、ターゲットに衝突し、高温プルームを発生し、高温合成反応を起こす。合成試料はTEMなどで分析される。 今回、穴の有る炭素ナノカプセルと、口の有る袋状ナノ炭素の合成を初めて確認できた。世界で前例が無いと思われる。これらの炭素カプセル、袋状内炭素には物質が入っており、有機物などを炭素膜が被い、保護する事ができると考えられる。小惑星衝突によるこれらの合成の可能性が示されている。さらに、有機物内包炭素カプセルの合成を進めたい。 衝突プルームについて、高速度カメラ、分光器、2波長ビデオカメラで観察することができた。約5000 Kの温度で20 μ秒程度の寿命を持つ。ラングミュアプローブ測定により、プルーム内電子密度は10E16 m-3 に達していた。特に、C2 分子発光の空間分布を初めて記録できた。これらは予測の範囲内に有った。今後、C2分子温度、CN分子温度の計算も行う必要がある。 アミノ酸の合成について、レーザーイオン化飛行時間型質量分析器によると、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸に対応するピークを得る事ができた。液体クロマトグラフ法などでのクロスチェックが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
与圧室の開発は成功したと言える。ほぼ100%の成功率で衝突実験を繰り返している。改良によりターゲット冷却、ターゲット温度のモニター、側面からプルームの画像記録、C2分子発光記録などが行える。 試料の回収、与圧室の準備には時間がかかるが、丁寧に行われている。その結果、良いTEM試料観察を行う事ができた。穴の有るナノ炭素カプセルと口の有る袋状ナノ炭素の合成を世界に先駆けて観測できたと思う。これらには有機物を貯蔵する能力があると思う。 プルーム温度の計測、分子温度の計算は現在実行中であり、追加の実験データが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度がこの申請研究の最後の年にあたり、成果のまとめが必要である。さらなる実験と分析のため、申請した予算が必要である。 1)衝突プルームの温度と密度を決定する。CN, C2分子発光からの温度測定、電子密度測定、分子密度測定を行い、計算を行う。 2)有機物内包カプセルと袋状ナノ炭素を合成し、その安定性を調べる。特に、温度、紫外線照射に対する安定性を明らかにする。 3)炭化窒素分子合成を明らかにする。種々のアミノ酸の合成を複数の方法で確認する。窒素付加の他の分子の合成を質量分析法などで同定する。 これらの成果は国際会議で発表し、国際的な論文集に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。H25年度で終了予定。研究の発展の為の新たな予算申請を検討する。
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