2011 Fiscal Year Research-status Report
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23540583
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
三浦 英昭 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40280599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 圭典 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (90299181)
伊藤 淳 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70413987)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | Hall MHD / 一様等方乱流 / エネルギー収支 / スマゴリンスキーモデル / ローパスフィルター |
Research Abstract |
Hall MHD乱流の直接数値シミュレーションを行い、そのエネルギー収支構造を調べた。Large Eddy Simulation (LES) の基礎データとして、直接数値シミュレーションで得られたデータにローパスフィルターを作用させた場合のエネルギー伝達関数に注目して解析を行った。カットオフ周波数が高い、すなわち目の細かいフィルターではエネルギー収支構造は大きく変化しないが、ある特定のスケール(テイラー長と考えられる)より粗いフィルターを作用させると、磁場の低波数領域でのエネルギー収支構造が大きく変化する事が明らかになった。これらの解析から、特定スケールよりも目が細かいフィルターの場合には散逸的なサブグリッドスケールモデルが有効であるが、目の粗いフィルターを作用させた場合には、非散逸的なサブグリッドスケールモデルが必要であることを示している。また、直接数値計算データを用いて、ローパスフィルターのカットオフ周波数より微細なスケール(サブグリッドスケールに相当する)のデータをスマゴリンスキー型のサブグリッドスケールモデルで代替する数値実験を行ったところ、全サブグリッドスケールデータの30%程度がスマゴリンスキー型モデルで表現できること、磁場の誘導項のスマゴリンスキー型モデルによる表現率が、Hall項の存在によって低下する事が明らかになった。これらの成果は、ヨーロッパ乱流会議(2011年9月、ワルシャワ)及び国際ステラレータ/ヘリオトロンワークショップ・アジア太平洋プラズマ理論合同会議(2012年1月、シドニー)において発表された。また、Plasma Physics and Controlled Fusion誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、研究期間中にスケーリング則の確認を行うことになっている。拡張MHDのもっとも簡単なモデルであるHall MHD乱流については2048*2048*2048程度の格子点のシミュレーションを行うことになっているが、平成23年度に1024*1024*1024格子点のシミュレーションを終えている。このデータを解析する事でスケーリング則の確認は済むので、Hall MHDモデルについては目標達成の直前まで到達している。また、エネルギー収支の解析と数値モデル構築の観点からは、数値モデルのひな形ができたこと、モデルの効率に関する解析は終了、論文投稿中である。これらの点から、Hall MHD乱流については初年度の目標を当初予定よりも早く達成しつつある。他方、有限ラーモア半径など、拡張MHD効果は他にもあり、これを取り入れたシミュレーションは遅れている。これは、Hall効果の長さ(イオンスキン長)とラーモア半径のスケール比の設定によって、シミュレーションのターゲットが太陽風か、あるいは核融合プラズマかに分かれるため、パラメータの見極めに慎重を期した事、また、背景磁場を入れた乱流シミュレーションの準備に想定よりも時間を要した事がが理由である。この検討に時間を要したことが遅延の原因である。Hall MHD乱流については予定以上の進捗を見せたこと、他方でラーモア半径効果については遅れが見られる事を勘案すると、全体の進捗としては概ね順調ではあるが、ラーモア半径効果を取り入れたシミュレーション研究を進展させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
拡張MHD効果として、ジャイロ粘性項を追加し、この効果が乱流スペクトルのスケーリング則に与える効果を明らかにする事に研究の重点を移す。エネルギースペクトルに対するジャイロ粘性項の影響を調べる上では、イオンスキン長とラーモア半径のスケール比の取り方で対象とする現象(太陽風、核融合乱流)が変化する。それぞれの場合について研究を進めるためには、シミュレーションプログラムの一層の高効率化が必要となる。MHD方程式への拡張効果の導入では、プラズマ粒子の分布関数のモーメントヒエラルキーを閉じるためのクロージャーに関する仮定が大きな意味を持つ。このため、クロージャーモデルの選定について、詳細な検討を行う。ジャイロ粘性項など新たな拡張MHD効果の導入だけではなく、背景磁場や流体の圧縮性の強さとエネルギースペクトルの関係を明らかにする必要がある。このため、背景磁場や圧縮性がある場合のエネルギー収支方程式を整理し、この収支を調べるためのコードを作成する。エネルギースペクトルのスケーリング則の形成は、プラズマの局所的な構造(渦構造や電流層構造など)と深くかかわっている。スケーリング則に影響を与える構造の特定を行うため、ウェーブレット解析を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は主にスーパーコンピュータによるシミュレーションと解析を手段として用いる。平成24年度は研究代表者の所属機関(核融合科学研究所)のスーパーコンピュータがアップデートのため1カ月停止するなど、計算資源の確保が課題となる。このため、国際会議出席旅費など必要不可欠な費用を除き、可能な限りの研究費を、他機関のスーパーコンピュータ利用料に充てる予定である。具体的には、東北大学サイバーサイエンスセンターのスーパーコンピュータSX-9を利用する事を想定している。上記の必要不可欠な費用とは、国際会議及び国内会議での成果発表旅費、研究打ち合わせを想定する。国際会議は平成24年11月にロードアイランドで開催予定のアメリカ物理学会(APS)プラズマ分科(DPP)を想定する。
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