2012 Fiscal Year Research-status Report
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23540583
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
三浦 英昭 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40280599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 圭典 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (90299181)
伊藤 淳 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70413987)
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Keywords | 乱流 / スペクトル / エネルギー収支 / Hall効果 |
Research Abstract |
拡張MHD方程式の一つ、Hall MHD方程式を用い、一様等方乱流の直接数値シミュレーションを通じて波数空間でのエネルギー収支構造に対するHall項の役割を調べた。 エネルギー伝達関数およびエネルギー流束関数を複数のHall係数について比較したところ、磁気エネルギーに関するエネルギー流束関数のみならず、運動エネルギーに関するエネルギー流束関数もHall係数の大小に強く影響される事が示された。磁気エネルギー収支では、Hall項の振幅が単純にHall係数の大小に比例する一方でダイナモ項は単純な比例関係が見られず、Hall効果が速度場と磁場の非線形効果に複雑に及ぶ事を示唆するデータが得られた。運動エネルギー収支においては、Hall係数が大きくなるにつれて移流効果が大きくなる一方で、ローレンツ力項の振幅が比較的小さくなる事が示された。これらの結果はアメリカ物理学会プラズマ分科会で発表された。 また、Large Eddy Simulation (LES) の実行を念頭に、直接数値シミュレーションデータにローパスフィルターを作用させた場合のエネルギー伝達関数を調べた。カットオフ周波数を高い場合にはエネルギー収支構造は大きく変化しないが、テイラー長と同程度のスケールにカットオフ周波数がある粗いフィルターの場合には、磁場の低波数領域でのエネルギー収支構造が大きく変化する事を明らかにした。直接数値計算データから、カットオフ周波数以下のスケールのデータをスマゴリンスキー型のサブグリッドスケールモデルでモデル化する場合の影響を評価したところ、MHD乱流に比べてHall MHD乱流では磁場の誘導項のサブグリッドスケール成分がスマゴリンスキー型モデルでは表現しにくい性質に代わる事が明らかになった。この成果はPlasma Physics and Controlled Fusion誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の達成目標の一つはエネルギースペクトルのスケーリング則の確認である。拡張MHDのもっとも簡単なモデルであるHall MHD乱流については2048*2048*2048程度の格子点のシミュレーションを目標としているが、この最大規模の計算を行う前に、より格子点数の少ない規模による複数のHall係数のシミュレーションの実行を優先したため、目標の達成には至らなかった。しかし、この一連のシミュレーションからスケーリング則を調べるための情報が豊富に得られた。これを元に平成25年度には最大規模のシミュレーションを実行し、スケーリング則を明らかにしたい。 他方、有限ラーモア半径など、拡張MHD効果は他にもあり、これを取り入れたシミュレーションは現在進行中である。計算負荷の小さい2次元計算での検証が進んでおり、平成25年度中には3次元計算に移行する見通しである。この点においては当初想定よりも研究が進展している。 上記のように、Hall MHD乱流では当初予定よりも若干の遅れが見られる一方で、第二段階として用意しているFLR 効果を取り入れたシミュレーションは当初想定よりも若干早目の進展を見せている。Hall MHDに関する結論を早期に得ると共に、FLR 効果を取り入れたシミュレーションに早期に移行するように努力する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究にやや遅れの見られるHall MHD乱流については、今年度、次年度をかけて最大規模の数値シミュレーションを実行する。このため、プログラムの実行効率の一層の向上を図る。他方、これまでに得られたシミュレーション結果から得られる知見を整理し、最適なシミュレーションパラメータを特定する。 これと並行し、有限ラーモア半径効果(FLR効果)を追加した、所謂Braginskii型方程式によるシミュレーションの早期の実行を目指す。プログラムは現在、高並列計算環境下での基本的な挙動の確認中であり、この確認が終わり次第、大規模シミュレーションに移行する。FLR 効果はレイリー・テイラー型不安定性の安定化などの性質が知られているが、乱流場のような強い非線形段階での挙動は明らかになっておらず、この効果がエネルギースペクトルの形成にどのような影響を及ぼすかに焦点を当てて研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は主にスーパーコンピュータによるシミュレーションと解析を手段として用いる。平成24年度に東北大学サイバーサイエンスセンターのスーパーコンピュータSX-9を利用した事から、この際の数値データの解析、再計算などには同システムを利用する予定である。今年度の研究費は主にこの計算機使用料に充当される予定である。また、付随的な経費として、大規模データを保存するためのハードディスク等を消耗品費として計上する。 この他に、成果発表のための国際会議出席旅費、研究打ち合わせ旅費を計上している。成果発表は平成25年9月にフランスで開催予定の第14回ヨーロッパ乱流会議を予定しており、この会議での発表は口頭発表で採択されている。さらに研究の進捗状況および計算機使用料の増減(これはシミュレーションコードの効率化に依存する)に応じて、他の国内・国際会議での成果発表も検討する。
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