2011 Fiscal Year Research-status Report
ランダム光散乱媒体を利用したフラクタル反応場の開発
Project/Area Number |
23550010
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
鈴木 炎 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (10216434)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE I‐Yin Sandy 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (80324028)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | Mie 散乱 / 多重散乱 / ランダム媒体 |
Research Abstract |
最近、われわれは、高分子水溶液ランダム媒体の研究によって、Mie 近接場と多重散乱を利用して色素分子間の光化学過程をリモート・コントロールできることを見出した。そこで本研究では、次の二つを目的としている。(1) ランダム媒体における光パイプ効果を拡張し、「フラクタル反応場」として確立する。(2) フラクタル反応場を光エネルギーの高効率利用のために活用し、合成・医療への応用を目指す。 研究実施計画に従い、平成23年度は、主としてランダム媒体並びに光パイプ形成条件の実験的・理論的検索を行うとともに、光パイプの立体構造をとらえる目的で、現有の顕微システムと本補助金で購入した光学系を組み合わせた装置を構築した。ランダム媒体を構成する光散乱性粒子として、リポソーム、ナノ・マイクロシェル、マイクロバブルなどを実験的に探索し、さらにその最適化を目指して Mie 近接場の理論計算を行った。その過程で、複素三角関数の発散に起因する球面 Bessel 関数の計算困難性に直面した。そこで任意精度計算スキームを導入することにより、この問題を克服し、従来困難とされてきた大粒子・大吸収・共鳴条件近傍などの場合にも、原理的に高精度の計算が可能となることを示した。また、Mie 散乱や多重散乱の理論・実験家が集う国際学会 LIP 2012 (Lasers and Interactions with Particles) に出席し、この成果を発表した。【意義と重要性】上記学会での議論によって、高分子水溶液ランダム媒体の光化学においてわれわれが見出した Mie 近接場と光パイプは、ナノ・マイクロフォトニクスの分野で最近注目されている Photonic Jet と呼ばれる現象と非常に関連が深いことが明らかになった。この効果の学際的重要性が広く認識されれば、新領域へのさらなる応用が可能になるものと期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画のうち、ランダム媒体並びに光パイプ形成条件の実験的検索は、ほぼ順調に進展している。リポソームに関する成果の一部は図書の一章として刊行予定である(ACS Publications, 査読中)。一方、理論的側面では、Mie 近接場の理論計算において、当初の予想を上回る計算上の困難に遭遇した。しかし、フレキシブルな計算スキームを利用したプログラムの開発によって、問題を回避することができた。さらに、この手法に興味を示す欧米の研究者との交流によって、本研究の学際的重要性を認識することができた。これは想定外の収穫と考えている。光パイプの立体構造を直接観測することには未だ成功していないが、平成23年度に構築した装置によって実験を続けており、観測の実現可能性について十分な感触を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の計画に従い、ナノ・マイクロフラクタル反応炉への応用を目指す。平成23年度に得られた結果を基にして、最適化された条件下でフラクタル反応場を発現させ、散乱粒子と共存する反応物質において、光化学反応を高効率で引き起こす条件を追求する。特に、高い入射光エネルギー密度が要求されるような反応について、光パイプによる促進効果や閾値低減効果の有無を検討する。また、光パイプ構造の直接観測、並びに、フラクタル構造の「レプリカ」生成を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【生じた状況】実験を進める上で必要となった光学部品の納期が年度末に間に合わないことが明らかになり、発注を次年度に延期した。【翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画】次年度の当初に発注の予定である。
|
Research Products
(2 results)