2012 Fiscal Year Research-status Report
ランダム光散乱媒体を利用したフラクタル反応場の開発
Project/Area Number |
23550010
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
鈴木 炎 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (10216434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE I‐Yin Sandy 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (80324028)
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Keywords | Mie 散乱 / 多重散乱 / ランダム媒体 |
Research Abstract |
われわれは、高分子水溶液ランダム媒体の研究によって、Mie 近接場と多重散乱を利用して色素分子間の光化学過程をリモート・コントロールできることを見出した。そこで本研究では、次の二つを目的としている。(1) ランダム媒体における光パイプ効果を拡張し、「フラクタル反応場」として確立する。(2) フラクタル反応場を光エネルギーの高効率利用のために活用し、合成・医療への応用を目指す。 研究実施計画に従い、平成24年度は、23年度に確立した Mie 近接場の理論計算法をさらに発展させ、光パイプ形成の最適化とナノ・マイクロフラクタル反応炉への応用を試みた。ランダム媒体を構成する光散乱性粒子として、今年度は特にポリスチレン粒子並びにマイクロバブルに注目し、前者の系においては長距離秩序を検出・制御する目的で、光散乱の角度依存分光測定を行い、また、後者の系では気泡のサイズ・並進運動と気泡間相互作用を制御する目的で、超音波共鳴スペクトロメータを構築した。 その結果、ポリマー粒子が形成する長距離秩序が光の多重散乱に特異的な効果をもたらすこと、並びに、超音波とレーザー照射によって気泡間相互作用を精密に制御することが可能であることを見出した。また、Mie 近接場計算の成果を論文にまとめて発表するとともに、リポソーム系におけるレーザー - 粒子間相互作用に関する一連の成果を著書(共著の1章)として発表した。 【意義と重要性】ランダム媒体の光化学においてわれわれが見出した Mie 近接場と光パイプは、ナノ・マイクロフォトニクスの分野で注目されている Photonic Jet 現象やフォトニック結晶と関連が深く、また、超音波化学において重要なトピックである気泡ダイナミクスとも関連することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画のうち、フラクタル条件の最適化の理論的・実験的検索は、ほぼ順調に進展している。 Mie 近接場の理論計算法に関する成果を論文にまとめて発表するとともに、リポソーム系におけるレーザー - 粒子間相互作用に関する一連の成果を著書(共著の1章)として発表した。 一方、光化学反応を高効率で引き起こす条件の決定と、局所的重合を利用したフラクタル構造の「レプリカ」生成に関しては、当初の予想以上に条件探索に時間がかかっており、実験を継続中である。しかし、困難は本質的なものではないと考えられ、光パイプの直接観測と同様に、実現可能性について十分な感触を得ている。また、この手法に興味を示す欧米の研究者から共同研究の打診を受けており、本研究の学際的重要性を再認識することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の計画に従い、ナノ・マイクロフラクタル反応炉の完成、並びに、医療とマイクロデバイスへの応用を目指す。 光線力学療法では、生体組織へのダメージを避けるため、レーザー光による薬物の活性化はできるだけ低い入射エネルギーで行えることが望ましい。そこで、フォトフリンとレーザーを用いた活性酸素発生など、臨床に実用化されている光化学プロセスのモデル系を構築する。さらに、平成24年度までに得られた結果を基にして、最適化条件下でフラクタル反応場を発現させ、光パイプ効果を応用して、低い入射エネルギーによる薬物の活性化を試みる。 得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【生じた状況】実験を進める上で必要となった光学部品の納期が年度末に間に合わないことが明らかになり、発注を次年度に延期した。 【翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画】次年度の当初に発注の予定である。
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Research Products
(3 results)