2012 Fiscal Year Research-status Report
水素結合分子集団の量子振動状態に関する新規高精度シミュレーション手法の開発
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23550011
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
三浦 伸一 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (10282865)
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Keywords | 経路積分 / 変分経路積分 / 量子モンテカルロ / 分子動力学法 / 水 |
Research Abstract |
水分子に対して変分経路積分分子動力学計算を実施した。水分子の振動状態を記述するための試行関数に関していくつかの変分パラメータのセットを準備し,各セットに対する計算を実行することにより,試行関数の質の計算効率等への影響を検討した。変分経路積分法は,たとえ貧弱な試行関数を用いても,自動的に正しい基底状態を取り出すことが理論的にわかっている。実際,計算を実施して驚いたことは,水分子が解離してしまい束縛状態を記述できないような試行関数を用いても,変分経路積分計算を行うことにより数値的な正解が得られたということである。このような数値的な頑強さは,自由度が大きくなり精密な試行関数の構築が難しくなるような場合にも,安心してこの手法を適用することができることを意味しており,大きな利点の一つとなる。一方,最適化が進んだ変分パラメータのセットを用いると,予期されたことではあるが,計算効率は大幅に改善されることがわかった。つまり,効率的に多自由度系の計算を実施するためには,試行関数の最適化が重要であることを定量的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子振動状態を記述する試行波動関数の質が、変分経路積分計算の効率に及ぼす影響については、水分子に対して実施し、この方向の努力はおおむね順調に進展している。一方、多分子系での試行関数の構築に関して、実装に向け問題点を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、多分子系の試行関数の構築を進めるとともに、分子系を記述する断熱ポテンシャル面を電子状態理論を用いて系統的に改善する手法について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度までに得られた結果を発表するための旅費に主にあてる予定である。
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Research Products
(13 results)