2011 Fiscal Year Research-status Report
超低温化学スパッタリング法が切り開く含遷移金属活性種研究の新局面
Project/Area Number |
23550014
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡林 利明 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70224045)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スパッタリング / 含遷移金属活性種 / 金属-硫黄間結合 |
Research Abstract |
スパッタリング法とは、放電等によって生じたイオンを電場によって加速したのちターゲットと呼ばれる固体物質にぶつけ、その構成物質を気相にたたき出す反応である。この反応は工業的にも広く利用されており、この場合は清浄なターゲットを超高真空下において物理スパッタリングが主流である。それに対し、ターゲットと試料ガスとの反応を利用した化学スパッタリングは系が「汚く」なることから避けられることが多い。我々は、化学スパッタリングの持つこの欠点を積極的に利用する「超低温化学スパッタリング法」を開発し、様々な含遷移金属活性種の物理化学的性質を明らかにしてきた。 本年度は、チオール類による貴金属ナノクラスターの安定化に対するモデルとして重要な「貴金属-硫黄活性種の安定性と反応性」に注目した研究を行った。まず、すでに展開中の銀-硫黄活性種についてさらに詳しい実験を行い、硫黄を含む系についての実験条件等についてのノウハウを蓄積したのち、それを白金を含む系に拡張し成果を得た。「銀-硫黄活性種」および「白金-硫黄活性種」については、ある程度の成果が集まってきたので、現在投稿準備中である。さらに、金を含む活性種についても研究を開始し、「金-硫黄活性種」についても成果が出つつある。結果の一部は、近いうちに学会にて発表する予定である。また、硫黄を含む化学種ではないが、パラジウムやコバルトなどを含む短寿命についても多くの知見を得た。 また、本研究の遂行途中で行った装置の高感度化は、異分野との共同研究に発展し、星間分子として期待される直線炭素鎖アルコールHC4OHや、大気ヨウ素化学における重要化学種であるCH2ICl,CH2IBrの分光学的研究へとつながった。これらについても順次学会発表・論文発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「銀-硫黄活性種」および「白金-硫黄活性種」については、分光学的検出と物理化学的解析が進み、現在投稿準備中である。さらに、「金-硫黄活性種」についても成果が出つつあり、結果の一部は近いうちに学会にて発表する予定である。これは、当初の予定と同じかやや上回るペースで成果が出ていることを意味する。この他にも、硫黄を含まないもののパラジウムやコバルトを含む活性種について多くの知見を得た。 また、本研究の遂行途中で行った装置の高感度化は、異分野との共同研究に発展し、星間分子として期待される直線炭素鎖アルコールHC4OHや、大気ヨウ素化学における重要化学種であるCH2ICl,CH2IBrの分光学的研究へとつながった。よって、現時点で当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、現在順調に進展している「金-硫黄活性種」についての研究を、重点的に進めてゆく。得られたノウハウををもとに、パラジウムやロジウムなどの他の金属と硫黄との結合についての研究へと展開してゆく予定である。さらには、貴金属クラスターを触媒として利用する場合のターゲットの大部分は有機化合物であることから、貴金属ー有機物活性種など、より生成が困難な化学種に向けてのチャレンジを進めてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の大部分は、当初の予定通り分光装置の維持運営費(超低温スパッタリング装置冷却用の液体窒素、および検出器冷却用の液体ヘリウム)として使用する予定である。また、昨年度からの繰越金の原因は投機的な貴金属価格高騰により、貴金属ターゲットの価格が暴騰したため購入が困難になったためである。無理に暴騰しているターゲットを購入してもサイズが小さくなってしまい、表面反応を利用する本研究としては致命的な状況となるので、情勢を見ながら最適な判断を下してゆく。現段階でも順調に成果が上がっていることから、価格の高騰が続く場合は金属の種類を変更したり、場合によっては装置の高感度化や解析システムの更新に力を注ぐなどして、最大限の成果が出るように研究費を使用する。
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Research Products
(8 results)