2013 Fiscal Year Annual Research Report
部分重水素化で導入した乱れの秩序化過程をプローブとする単分子膜の構造熱科学
Project/Area Number |
23550015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲葉 章 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (30135652)
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Keywords | 極低温精密熱測定 / 単分子吸着膜 / 重水素化 / 配向秩序化 |
Research Abstract |
本研究では,通常の構造解析や分光法で得られない構造情報,とりわけ分子間相互作用に関する知見を高精度熱測定により得ることを目的とした.そのために重水素化試料を用い,それを“プローブ”とした.部分重水素化により対称性が低下したメタンやメチル基は一般に,凝縮相では回転的振動の基底状態を複数もつことになり,その乱れ(余分のエントロピー)は極低温で秩序化することが我々の研究で明らかになっていた.その基底状態の分裂様式は,分子間ポテンシャルの対称性と強さに関する豊富な情報を含んでいる.バルク固体について我々が確立した以上の方法論を単分子吸着膜に展開することにより,精密熱測定が構造研究に大きく貢献できる局面を切り拓くのが本研究の最終目標であった. 平成23年度と24年度では,それまでバルク固体について熱測定を済ませていたメタンおよび6種のメチル基を有する化合物[ヨウ化メチル,メタノール,トルエン,4-メチルピリジン,2,6-ジクロロトルエン,2,6-ジブロモトルエン]について,一連の重水素置換化合物がグラファイト表面に吸着した単分子膜を対象として,その極低温熱容量の熱測定を完成させた.こうして,当初予定した物質それぞれについて,4種の同位体置換体(メタンについては5種)すべての単分子膜について0.6~20 K の温度域で高精度熱容量測定を行うことに成功し,過剰熱容量(エントロピー)が得られた. 最終年度であった平成25年度は,実験結果の解析に時間を費やした.その成果の一部をつぎの学会にて口頭発表(2件)を行った.1) 「グラファイト表面に吸着した一連のメタン単分子膜の熱容量」第49回熱測定討論会(2013年11月2日),2)「グラファイト表面に吸着した部分重水素化分子からなる単分子膜の極低温熱容量」日本化学会第94春季年会(2014年3月28日).
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Research Products
(2 results)