2013 Fiscal Year Annual Research Report
溶液内擬縮退系のための多配置電子状態理論とシミュレーション手法の開発
Project/Area Number |
23550018
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 晴之 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90251363)
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Keywords | 理論化学 / 擬縮退系 / 多配置電子状態理論 / シミュレーション技法 / 相対論的電子状態理論 |
Research Abstract |
本研究では,溶液内の擬縮退した複雑な電子状態の記述法としての多配置電子状態理論,および,溶液内あるいは生体内などの環境の効果を有効に取り込み,自由エネルギー面を一般的に構築するシミュレーション手法をあわせ開発し,溶液内の遷移金属系で,従来の手法では十分に明らかにすることのできない問題に適用することを目的としている。本年度は、相対論的分子軌道法における二成分法の近似精度の解析,RISM-SCF法によるメロシアニン類の励起スペクトルに対する溶媒効果と溶媒和構造,アミノ酸の混合溶媒中での溶媒和の解析,混合溶媒中におけるグリシンのプロトン移動反応の解析等を行った。相対論的分子軌道法における二成分法の近似精度の解析では,代表的な六種の二成分法について,単一のs型ガウス型波動関数をもつ一電子のエネルギーを計算し,エネルギーとガウス関数の指数との関係を求め,その結果から,二成分法によるエネルギーの精度についての知見を得た。RISM-SCF法によるメロシアニン類の励起スペクトルに対する溶媒効果と溶媒和構造の研究では,直鎖状のモデル系メロシアニンの溶液中での励起スペクトルをRISM-SCF法によって求め,スペクトルの鎖長依存性,溶媒依存性,および,溶媒和構造に関する知見を得た。アミノ酸の混合溶媒中での溶媒和の解析では,アミノ酸と環境の相互作用の分子論的描像を得るために,水・アセトニトリルの混合溶媒におけるアミノ酸の構造・安定性および溶媒和構造を調査し,水・アセトニトリル混合溶媒の各モル分率での最安定構造および溶媒との相互作用を見出した。混合溶媒中におけるグリシンのプロトン移動反応の解析では,水・アセトニトリル混合溶媒中での分子内プロトン移動反応のプロファイルを求め,双性イオン状態に対し水分子がアセトニトリル分子よりも安定化に寄与するという知見など,溶媒効果の分子論的描像を得た。
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Research Products
(12 results)