2011 Fiscal Year Research-status Report
配向固定した超分子系における長距離相互作用と光励起ダイナミクス
Project/Area Number |
23550020
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
浅野 素子 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (80201888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 竜也 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20360638)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | エネルギー移動 / 長距離相互作用 / 超交換相互作用 / ポルフィリン / 光エネルギー変換 |
Research Abstract |
生体内および人工合成分子系において、電子移動・エネルギー移動を初めとする長距離ダイナミクスがどのような要因に支配されるのかは極めて重要である。これらを明らかにすることは自然科学の根本原理を解き、また、新しい物質系、反応系の構築理念を導くものでもある。しかし、これまで長距離相互作用によるダイナミクスは直線的な架橋部をもつ分子系について精力的に研究がなされてきた。本研究では経路結合依存性や非直線的経路をもつ連結分子系におけるダイナミクスを系統的実験により明らかにし、その長距離相互作用のメカニズムの深化を目的とした。ポルフィリンは大きな環状π電子系をもつ化合物で、周辺置換基の修飾により、あまり大きな電子状態の変化がない。したがって、ポルフィリン錯体をドナー、アクセプターとして、架橋子を連結した分子システムは、架橋部経路の違いのみを議論するのに適している。末端ドナー部に亜鉛ポルフィリン錯体、アクセプター部にフリーベースポルフィリン錯体をもち、架橋部を直線的、非直線的とした2種のポルフィリン二量体における一重項-一重項エネルギー移動速度を比較した。時間分解蛍光測定により、亜鉛ポルフィリンの減衰とフリーベースポルフィリンの立ち上がり時間からエネルギー移動速度を見積もった。さらにフェルスター機構によるエネルギ移動速度を差し引き、through-bond機構によるエネルギー移動速度を求めた。その結果、距離が短く経路数はほぼ同じであるが経路形状が非直線的な分子系のほうが、thourgh-bond機構の寄与分としても、エネルギー移動速度が格段に遅くなっていることがわかった。その理由として、経路上の分子軌道の性質が大きく、長距離相互作用に関与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜鉛ポルフィリンーフリーベースポルフィリン二量体において、架橋部をm(メタ)とp(パラ)のフェニルエチニルベンゼンとした2つの二量体のエネルギー移動を比較することにより、純粋なthroughbond機構の寄与における経路形状の違いを明らかにすることができた。また、この結果を国際学術論文に公表することができた。一方、装置の開発の方は、まだ完全ではないので24年度へと継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
一重項ー一重項エネルギー移動だけでなく、 長距離相互作用の化学結合依存性について、不対電子種とのlong-range 相互作用による項間交差速度増加過程について発展させる。また、不対電子があるシステムにおける三重項ー三重項エネルギー移動についても調査していく。一方、装置開発面では引き続き過渡吸収測定装置および時間分解ESR装置の改良を行っていく。このことにより、三重項ー三重項エネルギー移動系や項間交差系において、速度の測定と相互作用の絶対値の抽出を可能にすることを目指す。長距離相互作用のメカニズムの理解について深化させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、装置改良のための光学部品、電気系等の消耗品の予定である。また、測定溶媒、寒剤としての液体He代を計上している。成果発表を学会で行うための旅費にも使用予定である。
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Research Products
(8 results)