2013 Fiscal Year Annual Research Report
配向固定した超分子系における長距離相互作用と光励起ダイナミクス
Project/Area Number |
23550020
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
浅野 素子 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (80201888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 竜也 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20360638)
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Keywords | エネルギー移動 / リザーバー / 近赤外発光 |
Research Abstract |
銅(II)ポルフィリンは近赤外領域に発光をもち、室温溶液中でブロードな燐光を発する。しかし、Cu(II)はd不対電子をもつため常磁性であり、Cu(II)ポルフィリンからの発光の強度は弱く、寿命は短い。そこで、Cu(II)ポルフィリンにZn(II)ポルフィリンを配向固定する架橋子を用いて連結したポルフィリンへテロ二量体において、主に時間分解発光測定、過渡吸収、他の分光学的手法とそれらの温度変化の実験から、Cu(II)ポルフィリンの発光を10倍長寿命化するメカニズムを見い出した。 Zn(II)ポルフィリンはその励起三重項がCu(II)ポルフィリンの最低励起状態よりも相対的にエネルギーの低い。Zn(II)ポルフィリン-Cu(II)ポルフィリン二量体は、Zn部またはCu部から光励起されると、速い項間交差とエネルギー移動を経て、最低励起状態であるZn部三重項に分布する。Cu部からZn部へのエネルギー移動は三重項間で起こる。ここでZn部三重項はリザーバーとして機能する。Cu部三重項とのエネルギーレベルが近接しているため、熱励起によりCu部三重項へ再分布し、基底状態へ緩和、発光する。このメカニズムにより銅ポルフィリンの近赤外発光はの寿命は、参照単量体と比べ、10倍の長寿命化した。また、二量体のZn部三重項から、Cu部からの近赤外発光は、エネルギー障壁400 cm-1を経た発光であることが明らかとなった。 熱励起エネルギー障壁の大きさや発光寿命は、異なる架橋子をもつ類似二量体でも同程度となり、架橋子への依存性は小さく、長寿命化のメカニズムが広く成り立つことを明らかになった。室温溶液中では無発光の亜鉛ポルフィリン三重項状態がリザーバーとなり、短寿命発光種の長寿命化の足がかりとなることが明らかとなった。
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