2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550025
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
佐甲 徳栄 日本大学, 理工学部, 講師 (60361565)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 人工原子 / 量子ドット / 光と物質の相互作用 / ラビ振動 / 電子相関 / 共役フェルミ孔 |
Research Abstract |
研究の初年度である平成23年度は, まず人工原子の複雑な電子状態を解明することを目的として, 研究実施者が近年提案した「共役フェルミ孔」に着目し, 人工原子の内部波動関数における構造を調べた. 共役フェルミ孔は, 従来知られているフェルミ孔と対になる概念であり, 「スピンが平行な電子同士が避けあう空間」を規定する従来のフェルミ孔に対して, スピンが反平行な電子間において2電子が避けあう空間を規定するものである. 完全配置間相互作用法によって2次元2電子人工原子の波動関数を計算し, 重心の回転運動に相当する自由度を積分することによって内部波動関数を抽出した. フェルミ孔および共役フェルミ孔の構造を調べた結果, 人工原子においては, 通常の原子の場合とは異なり, 電子間反発ポテンシャルが発散する領域の近傍に大きな確率密度を持つことが示された. また, 人工原子の光励起に伴う電子の集団運動を明らかにするために, 2電子人工原子に対応するHe原子に着目し, 共鳴2光子イオン化に伴う時間依存ダイナミクスを調べた. その結果, 光の強度が小さい場合には, イオン化確率は通常の冪則に従い, 光強度の2次の依存性を示す一方, 光の強度が中程度の場合, および大きい場合には, それぞれ, 1次以下および, 1次の依存性を持つことが示された. これらの傾向と状態占有数との対応を調べた結果, 光強度が中程度の場合は, 基底状態と中間状態である共鳴状態間のラビ振動が始まる場合に対応し, 光強度が大きい場合には, このラビ振動が頻繁に起こり, 基底状態と共鳴状態の飽和がイオン化の光強度依存性に大きく寄与していることが示された. 本研究によってラビ振動に基づくイオン化抑制機構の詳細が始めて明らかとなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた, (i)配置間相互作用法に基づく人工原子の高精度波動関数の構築, および, (ii)その波動関数を入力とする確率ダイナミクスのコード作成は既に完了している. これらの成果に加え, (i)によって得られた人工原子の波動関数の内部空間における確率密度の解析を行い, 共役フェルミ孔の構造を明らかにしたこと, また, 2電子人工原子に対応するHe原子について, 共鳴多光子イオン化における電子ダイナミクスを調べ, ラビ振動に基づくイオン化抑制機構の解明を行ったことから, 当初の計画以上に研究の進展があったと考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では, 前年度に開発を行った計算システムを用いて, 多電子人工原子における複雑な波動関数の本質を明らかにする. 人工原子においては, 閉じ込めの強弱によって, 相関エネルギーが全エネルギーの数パーセントから数十パーセントまで非常に大きく変化することが知られておいる. この電子相関の大小が電子ダイナミクスにどのように反映するのか, さらにまた, スピン多重度が異なる状態間において, 電子ダイナミクスがどのような相違示すのかを明らかにする. また, 前年に見出した人工原子の内部波動関数における共役フェルミの特徴的な構造と電子相関の関係, および, 人工原子においてフントの第一規則が成り立つ起源との関係を解明する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に購入した計算機サーバーを拡張し, 大規模電子ダイナミクス計算の実行を可能にする. また, 海外共同研究者であるPaul-Antoine Hervieux教授(ストラスブール大学・材料物理化学研究所, フランス)との研究打ち合わせを行い, 人工原子における多電子ダイナミクスの可視化について議論を行う. また, 研究成果を国内学会および国際会議で発表し, 国内外の研究者にその成果を問う.
|
Research Products
(5 results)