2012 Fiscal Year Research-status Report
フェムト秒強レーザー場による非破壊的イオン化を利用したMALDIプルームの活性化
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23550026
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
星名 賢之助 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (60292827)
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Keywords | MALDI / フェムト秒レーザー / 質量分析 / 光イオン化 / レーザー脱離 / プロトン移動 |
Research Abstract |
本年度は,以下の3つについて主に行った.(1)MALDI-MS装置の組み立て:MALDIプルーム中にフェムト秒レーザー照射を行うためのMALDI装置およびリフレクトロン型質量分析器が米国Jordan社より納品された.これを設置するためのメインチェンバーの製作を行い,システム全体の組み立てを行った.現在,真空排気をする段階であり,予定よりも遅れているが着実に研究計画は進んでいる.(2)既設MALDI装置におけるリチウム付加体検出:これまで研究代表者のグループでは,熱平衡モデルに基づいてMALDI信号を定量的に解釈する研究を行ってきたが,このモデルには中性分子種の存在量を近似するという不確定性が含まれていた.そこで,24年度では,試料にLiを加え,Li+付加体としてMALDI-MSスペクトルに観測されたアミノ酸信号(たとえばLysLi+)を系統的に測定する新たな取り組みを(1)と平行して行った.これにより,観測データの種類が増え,結果として,これまでのモデルで近似していた中性種の量をモデルに取り入れる必要性が無くなり,より高い精度でMALDI信号強度の定量的な評価が可能となった.実際に,LysおよびHisについて測定を行い,新しいモデルの有用性を示すことができた.(3)MALDIにおける負イオンの信号強度の定量的評価:(1)の実験では,これまで対象としてきた正イオンだけでなく,負イオンも有用な情報となるはずである.そこで,既設MALDI装置を用いて,負イオンの検出を試みた.その結果,気相酸性度の高いAsn,Cys,Serについて負イオンの検出が可能であった.負イオンが,たとえばAsnの場合,(CHCA-H)- + Asn と CHCA + (Asn-H)- の平衡反応により生成すると仮定し,従来モデルによって定量的解釈が可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は,新規MALDI-MSシステムを完成,作動させ,データを取得するところを達成目標としていたが,必要な装置は概ねそろい,ようやく組み立ておよび真空槽の排気を始めたところである.当初の計画より遅れている理由は,研究計画に問題があるためではなく,申請時に予定していた研究協力者の異動,および,研究代表者の学内業務による時間的制限によるものである.しかし,一方では,本申請のデータ解釈に必要な実験を,既設MALDIシステムを用いて研究室学生を中心に進めており,全体の計画としては次年度に目標が達成されると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,研究代表者のグループに助手が加わり,以下のステップに従って加速的に計画を遂行できる予定である.(1)現在真空引きを行っているMALDI-MSシステムにおいてリフレクトロン型質量分析器を設置する.そして,既設YAGレーザーの第三高調波を脱離レーザーとして用い,マトリックス剤の信号を確認,最適化することにより,新規MALDI-MSシステムを完成させる.次に,(2)MALDI-MS信号測定が最適化された条件において,MALDIプルーム中にフェムト秒レーザーが照射できる条件を調整する.フェムト秒レーザー照射の有無による信号変化に着目し,アミノ酸試料を対象にデータ取得する.(3)(2)で得られた測定結果を解釈する理論モデルを構築する.具体的には,従来のMALDI過程におけるイオン生成モデルにフェムト秒レーザーイオン化による効果を取り入れ,新たなモデルを構築する.そして,定量的な評価を行う際に必要な気相塩基性度などの物理量は,誤差数%以下で量子化学計算で得られる数値を利用する.上記ステップ(1),(2).(3),いずれにおいても,達成した段階で十分に学会発表するに値するため,積極的に成果発表を行っていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(5516円)が生じた理由は,残額が端数となり購入目的の消耗品に充てることができなかったという状況による.平成25年度における請求額(直接経費500,000円)と合わせて,当初の計画通り主に消耗品として使用する予定である.
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Research Products
(3 results)