2012 Fiscal Year Research-status Report
分子内及び分子間エネルギー移動を起源とする光機能発現の理論的解明
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23550029
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
石田 干城 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10421950)
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Keywords | 理論化学 / 生体分子 / イオン液体 / 金属錯体 |
Research Abstract |
本研究課題の研究代表者は分子間及び分子内でのエネルギーの移動過程の問題に対して、生体分子内でのエネルギーの移動速度に関する研究と、分子間のエネルギー移動における分子間相互作用の効果に関する研究を並行して行った。これらは前年度の研究計画の遂行中にエネルギー移動過程を光以外でも制御するような系として分子間相互作用の効果が顕著に表れるイオン性液体中でのエネルギー移動過程に関する研究が本研究課題の遂行にも極めて有効であることを見出したためである。具体的には分子内エネルギー移動過程については移動速度への溶媒効果の検討のための方法論の開発、分子間のエネルギー移動については特に分子間相互作用の効果が期待されるイオン間相互作用下でのイオン液体中でのエネルギー移動・散逸の分子動力学シミュレーションによる研究を遂行した。これらの研究結果より、分子内エネルギー移動過程をシミュレーションの方法と組み合わせる形で計算を実行することが可能であることを見出し、さらに方法論として発展させてきているところである。また分子間のエネルギー移動・散逸に関する研究については、特にイオン液体のイオンの価数の違いよるイオン間相互作用の違いがエネルギー散逸に関係する緩和過程に大きく影響することをシミュレーションにより見出した。加えて動的不均一性との関連性についても研究を行い、静的な情報である構造因子との関係性から(イオン)分子の集団的な運動の情報が得られることを見出した。これらの成果は学術論文として発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題にとって重要な分子間および分子内エネルギー移動速度を見積もるために分子動力学シミュレーションとの組み合わせによるプログラムコード化への取り組みを行ってきている。また、溶媒効果に関するテスト計算のケースとしてイオン液体中での溶質分子(有機発光体分子やモデル生体分子などを選択)を含むクラスター系での計算も開始したところである。イオン分子(イオン液体中)と溶質分子間でのエネルギー移動についても分子動力学シミュレーションの方法を用いてすでに開始したところである。以上、研究計画としては、光合成過程(光アンテナ系)に関する計算がテスト計算と準備段階にとどまってはいるが、エネルギー移動過程を制御できる周囲の環境の効果という観点から、強いクーロン力により反応場の制御が期待できるイオン液体中でのイオン分子と溶質分子(有機発光体分子やモデル生体分子)間のエネルギー移動の問題の考察へと展開され、その研究からエネルギー移動過程の新たな制御法の可能性を見出すに至ってきている。これらは今後の金属錯体の研究への応用にもきわめて有効であることが分かり、研究の進展に貢献があったと思われるので、現段階での達成度の自己評価の理由とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は光合成反応過程の(光)アンテナ系でのクロロフィルとバクテリオクロロフィルでのエネルギー移動速度計算についてもシミュレーション手法と電子状態計算を組み合わせて計算を実行し研究を進める予定である。さらに、金属錯体への応用についてはスピンー軌道相互作用の重要性を考慮して遷移金属と配位(溶媒)分子間とのエネルギーの移動についてのクラスター計算を先行して進め、実際に溶媒効果を取り入れた計算を行う上で有用となるエネルギー移動過程解析法の研究を遂行する。また、ランタニド金属の電子状態については、フェナントロリンを配位子にしたランタニド錯体についての励起配位子中での項間交差過程についても考察を行う予定である。加えて、エネルギー移動過程を光以外でも制御するような系の一例として分子間相互作用の効果が顕著に表れるイオン性液体中での研究が本研究課題の遂行にも極めて有効であることを見出したため、イオン液体や有機溶媒などを用いた場合の計算と比較を行い、エネルギー移動過程における溶媒効果に関する解析も行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プログラムコードの作成および高速化の目的でワークステーションを次年度研究費により導入する予定である。とくに光合成系と金属錯体の系の計算を並行して効率よく遂行するために複数のCPUを搭載して計算機とデータ保存用の機器の使用が不可欠であると考えられる。したがって複数のCPUを搭載したワークステーションとデータ保存用ストレージの購入に必要な予算として平成25年度の研究費(設備備品費)を充てる予定である。
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Research Products
(4 results)