2012 Fiscal Year Research-status Report
電荷移動型自己組織化単分子膜による有機電子デバイスの界面ナノ空間の制御
Project/Area Number |
23550038
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小川 智 岩手大学, 事務局, 理事 (70224102)
|
Keywords | 有機電子デバイス / 電荷移動型自己組織化単分子膜 / ナノ界面空間 |
Research Abstract |
本研究は、π電子系有機化合物あるいは有機金属化合物を用いた3種類の有機電子デバイス(三種の神器)である有機TFT(有機薄膜トランジスタ)、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)、有機薄膜SC(有機薄膜太陽電池)に共通するナノ界面空間の接合の問題を電荷移動型自己組織化単分子膜(SAMs: Self-assembled Monolayers)を用いての界面化学修飾により解決しようとするものである。今年度(平成24年度)の研究では、ナノ界面空間制御をより効果的な電荷移動型SAMsを用いて行うため、研究期間内に以下のことを明らかにした。 1 ナノ界面空間の接合問題の理論的考察 2 有機TFT電荷移動型自己組織化単分子膜(SAMs)修飾による伝導チャンネルのキャリアー移動度の制御 非経験的分子軌道計算により、合成を達成したSAMs分子の長軸方向の長さを算出し、斜入射X線構造解析結果から実験的に得られた単分子膜の厚さとの一致を確認した。また、界面問題は、以下の二つに大別され、いずれも有機化合物(有機半導体)と無機化合物(絶縁体基板や電極)との間のナノ界面空間の接合の問題である。(1)有機半導体-絶縁体(キャリアー密度に関わるナノ界面空間問題)、(2)有機半導体-電極(電荷注入に関わるナノ界面空間問題)。そこで、ナノ界面空間制御をより効果的なSAMsを用いて実施するため、単に電気双極子を有するSAMsを用いるのではなく、積極的に界面電子移動を起こすような電荷移動型SAMsを用いてナノ界面空間を化学修飾し、伝導チャンネルのキャリアー移動度を向上させ、実用的な電子デバイスの実現に繋げた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三種類の有機電子デバイスの作製のうち、有機TFTデバイスの試作を行った。高ドープしたシリコンをゲート電極に用い、その上にSiO2ゲート絶縁膜と金・クロムで作製されたソース、ドレイン電極を配置し、ソース、ドレイン間の電流値を、ゲート電圧によって制御できる構造を作製した。SAMsはゲート絶縁膜上に溶液法により作製し、その膜構造は、X線光電子分光(XPS)、X線反射率等により決定した。また、SAMsの形成段階についても接触角測定やXPSにより観測し、最適条件の確立に役立てた。最適条件で形成したSAMsの上に超高真空下(UHV)でペンタセンあるいはフラーレンを蒸着し、TFT特性を評価した。この際、数種のSAMsにおけるデバイス特性の比較評価のため、同時に同一条件で有機半導体の成膜を行い、SAMsが直接デバイスに与える影響のみを観測できるように注意した。膜構造の解析には、接触角測定、斜入射X線構造解析装置、X線光電子分光装置、さらに、関連する有機TFT評価装置群を利用した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、有機TFTの試作実績を踏まえ、有機ELデバイスの試作開発を行う。有機ELは、自発光の特徴を活かし、ディスプレイや照明分野において新たな付加価値を創出する要素デバイスとして近年実用化が進められている。また、簡便な製造プロセスにより作製が可能であり、低コスト、低環境負荷型の次世代デバイスとしても今後の発展が期待されている。しかしながら、有機ELは有機半導体材料とそれを挟む無機電極からなる単純な構造により構成されるが、各層間でのナノ界面空間の接合問題が性能に大きく影響するため、実際には性能向上のための複雑な積層構造を高度な真空蒸着技術を駆使して作成することが必要となり、低環境負荷の特徴を活かした低コスト化が実現できていないのが現状である。そこで、これまでの有機TFTの試作実績を有機ELに展開し、ナノ界面空間の接合問題の解決を図るための基礎技術を開発する。さらに、低コスト型の有機TFT、有機薄膜SCと組み合わせたハイブリッドデバイスの試作品を開発する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(9 results)