2011 Fiscal Year Research-status Report
イソテルラゾール類のヘテロ環化付加を経る縮環ピリジン系アルカロイド骨格の構築
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23550039
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
嶋田 和明 岩手大学, 工学部, 教授 (10142887)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イソテルラゾール / ヘテロ環化付加 / 多置換ピリジン / Friedel-Crafts環化 / 縮環ピリジン系アルカロイド |
Research Abstract |
本研究の目的は適切な置換基を有するイソテルラゾール類とアセチレン系ジエノフィルのヘテロ環化付加を共通のキーステップとして種々の縮環ピリジン系アルカロイド骨格の短段階構築を実現することであり、本年度の検討は主に2-および4-アザフルオレノン骨格と1-アザフェナントレン骨格の構築に向けられた。実際に我々は種々の3,5-ジ置換イソテルラゾール類と電子吸引基を有する非対称アセチレン系ジエノフィルの熱反応を種々検討し、極めて温和な反応条件下で高位置選択的に環化付加が進行し相当する多置換ピリジン類を収率良く与えること、ジエノフィル由来の電子吸引基が例外なくピリジン環の3位に導入されること、などをX線結晶構造解析なども用いて明らかにした。さらにピリジン類の2位または4位に芳香環、3位にエステル基を有するピリジン誘導体をポリリン酸とともに加熱するとFriedel-Crafts環化を経て相当する2-または4-アザフルオレノン類が単一生成物として高収率で得られることも見出した。さらに同様の1-(o-メトキシカルボニル)フェニル-4-トリメチルシリル-3-ブチン-2-オンとイソテルラゾールのヘテロ環化付加と引き続くFriedel-Crafts環化により 1-アザアントラキノン骨格の合成にも成功した。しかし後者の合成に用いるジエノフィルとしてより適当と考えられるベンゾイルプロピオール酸エステルの調製には至らず、適切なジエノフィルの選定とその簡便合成が本合成経路の課題である事が明らかになりつつある。さらに現段階では1-アザフェナントレン骨格構築に向けて相当するジエノフィルの合成に成功しており、今後はイソテルラゾール類との環化付加の実現が課題となっている。以上の検討により、我々は本法が種々の縮環ピリジン系アルカロイド骨格の短段階構築に適していることを実証しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は本年度の検討課題の目標の一つとしてアザフルオレノン骨格を持つ代表的なアルカロイドであるオニチンの合成を目標としており、その合成計画のヘテロジエン部分に相当する3-メチルイソテルラゾールの調製が必要であった。しかし当研究室で以前開発した手法をそのまま用いて2-ブチン-1-アールからの4段階の化学変換を行った場合には目的とする3-メチルイソテルラゾールは低収率で得られるに留まり、反応条件等の検討にも関わらずその収率向上には成功しなかった。また1-アザアントラキノン骨格の構築においては、上述したように1-(o-メトキシカルボニル)フェニル-4-トリメチルシリル-3-ブチン-2-オンの調製には成功したもののその収率は低く、その収率の改善にも成功していない。さらにより適切なジエノフィルと考えられるベンゾイルプロピオール酸エステルの調製も試みたが、成功に至っていない。さらに1-アザフェナントレン骨格の構築に必要なジエノフィル(2-オキソ-4-フェニル-3-ブチン酸メチル)をフェニルアセチレンとシュウ酸エステルから調製することには成功しているが、残念ながらこのジエノフィルとイソテルラゾールの環化付加には現段階では成功しておらず、従って1-アザフェナントレンの環化前駆体となるピリジン誘導体の合成に至っていない。これらはいずれも間違いなく実験条件の精査に関わる検討不足に起因するが、それは本研究の実施時期が研究代表者(嶋田)の平成23年7月の教授昇任に伴う新たな研究室の立ち上げの時期と重なり実験環境が不十分であることが一つの要因と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の課題は前年度に完成していない合成課題を実現させる事であり、さらにこれまでの縮環ピリジン骨格構築を応用して1-アザフェナントレン骨格とa-およびd-カルボリン骨格の構築を行う事である。前者の骨格構築の手法は前年度から引き続き2-オキソ-4-フェニル-3-ブチン酸メチルとイソテルラゾールのヘテロ環化付加を基本とし、このジエノフィルはフェニルアセチレンとシュウ酸モノメチルより調製する。この環化付加により得られるピリジン誘導体からは引き続くポリリン酸処理によりFriedel-Crafts環化を経て1-アザフェナントレンキノン骨格を形成するはずである。またこれとは異なる合成経路として、既に骨格構築に成功している1-および4-アザフェナントレン骨格のB環のカルボニル基に着目して、(a)硫黄イリドの作用により生成するエポキシドの開環転位反応、および(b)シリルジアゾメタン等の作用により環拡大する手法も検討する予定である。一方a-およびd-カルボリン骨格を同様の手法で構築するためにはインドライン(Indolyne)合成等価体を用いるヘテロ環化付加が骨格構築のキーステップとして位置づけられる。そのためにはこれまでとは異なりニトロアセチレン類をジエノフィルとして用いる必要があるが、ニトロアセチレン自体が活性化学種であるため、相当する化学種を系中で効率的に発生させる手法の確立が当面の問題となる。本研究では既知の手法により調製されるβ-スルフィニルニトロスチレン類の熱分解により系内にアリールニトロアセチレンを発生させ、引き続くヘテロ環化付加に供する予定である。この反応の生成物からはニトロ基の還元によりナイトレン環化を経て目的とするa-およびd-カルボリン骨格が生成すると予想される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究経費の合計は90万円である。この経費を上記の研究計画の遂行に充てるために、物品購入費として45万円、学会出張旅費として30万円、その他諸経費として15万円を配分する。物品購入費の内訳は各種消耗品(ガラス器具等)の購入費10万円と有機溶媒・試薬類の購入費25万円であり、本年度は設備備品等の購入の予定はない。また30万円の学会出張旅費を用いて2度の国内学会出張((1) 複素環化学討論会、開催地:京都、(2) 日本化学会第93春季年会、開催地:関西)と1度の海外出張(第25回有機イオウ化学国際会議、開催地:ポーランド)を行う予定である。さらに諸経費の15万円はNMRやMS等の各種機器分析装置使用料に充てる。
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Research Products
(2 results)