2011 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属錯体の特性を活かした新規なケイ素-ケイ素結合形成反応の開発
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23550044
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
菅野 研一郎 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20360951)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | オリゴシラン / グリニャール試薬 / ヒドロシラン / 部分還元反応 |
Research Abstract |
ヒドロシランはヒドロシリル化反応や還元反応などに利用される有用な化合物である。ヒドロシランは一般に水素化アルミニウムリチウムによるクロロシランの還元反応によって合成されるが、水素化アルミニウムリチウムは反応性の高い試薬であるため、二箇所の反応点をもつ分子の一方だけを選択的に還元するのは困難である。これに対し本研究では、遷移金属触媒の存在下にグリニャール試薬を還元剤として用いると、ジクロロオリゴシランの部分還元反応が高い選択性で進行することを見出した。 1,2-ジクロロテトライソプロピルジシランを用い、種々の条件下で部分還元反応を検討した。種々の遷移金属錯体を触媒として用いたところ、4族のチタン錯体が最も高い反応性を示すことが分かった。その中でも二塩化チタノセンを触媒に用いた場合は、反応が1時間で完結し、97%という高い収率でモノヒドロ体が生成した。四塩化チタンを触媒に用いると、やや反応性は低下するが良好な選択性を維持したままで目的のモノヒドロ体を与えた。これに対し、5族金属塩である塩化ニオブや6族の塩化クロムを触媒にしたときには、反応性が大きく低下した。また、用いるグリニャール試薬の種類によっても反応性は大きく変化した。ブチル、およびイソプロピルグリニャール試薬を用いた場合に比べ、t-ブチルグリニャール試薬による還元反応は、著しく反応速度が低下した。以上のことから、ジハロオリゴシランの反応性に応じて、用いる金属触媒やグリニャール試薬を適切に選択することによって、種々のジハロオリゴシランの高選択的な部分還元反応を達成することができた。 本結果で得られるオリゴシランは非対称に官能基が導入されていることから、より複雑な骨格を持つケイ素クラスター化合物のビルディングブロックとして大変有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階において本研究では、ジハロオリゴシランの高選択的な部分還元反応という新規な反応を見出している。これは、当初計画していた反応とはやや異なるが、本研究が最終的な目標に位置づけている、既存の方法では合成できない複雑な構造を持ったオリゴシラン化合物の合成につながる反応であり、これをさらに推し進めることによって、最終目標を達成できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ジハロオリゴシランの部分還元反応のさらなる高効率化を行う。現在までのところ、用いた金属触媒は有機配位子を持たない無機金属塩や、単純な配位子が置換した錯体を検討したのみである。そこで、より複雑な配位子を有する触媒を検討すれば、さらに高活性かつ高選択性を示す触媒系が発見できると考えられる。さらに、基質に用いるオリゴシランも、直鎖状のものだけでなく分岐構造を有するもの、3つ以上のハロゲンが置換したものなどを検討し、反応の適用範囲を拡大する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度と同様に、主に消耗品費に研究費を用いる予定である。これは、本研究の性質上当然のことであるが、日々の実験に必要な金属試薬、有機化合物試薬、有機溶媒、ガラス器具などは、様々な種類のものがその時々の進捗状況によって必要となり、その都度購入しなくてはならないためである。また、研究成果の発表のための国内旅費にもその一部を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)