2012 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属錯体の特性を活かした新規なケイ素-ケイ素結合形成反応の開発
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23550044
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
菅野 研一郎 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20360951)
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Keywords | オリゴシラン / Grignard試薬 / ヒドロシラン / 部分還元反応 / プッシュ-プル型化合物 |
Research Abstract |
両端に電子供与基と電子求引基とを有するプッシュ-プル型の非対称置換オリゴシランが、新たな機能性材料として注目されている。しかし、プッシュ-プル型の化合物のほとんどは、電子供与基と電子求引基との間をπ電子系で連結したものであり、σ電子系であるケイ素-ケイ素結合で連結したものについてはあまり研究が行われていなかった。この原因は、そのような非対称なオリゴシラン化合物を効率的に合成する手法が限られていたためであると推測される。 これに対し本研究ではこれまで、ジクロロオリゴシランの触媒的な部分還元反応によって、両端にクロロシラン部位とヒドロシラン部位とを持つオリゴシランを高選択的に合成できることを見出している。そこで、本手法で得られるオリゴシランを用いれば、両端にそれぞれ異なる置換基を導入した新たな非対称置換オリゴシランが合成できると考えた。 1-クロロ-1,1,2,2-テトライソプロピルジシランにリチウム試薬を作用させると、ヒドロシラン部位を保持したまま置換基を導入することができた。また、1-クロロ-ヘキサメチルトリシラン、1-クロロオクタメチルテトラシランの場合は、Grignard試薬を用いることで置換基を導入できた。さらに、1-チエニル-3-ヒドロトリシランを用いてパラジウム触媒を用いたヒドロシランのアリール化反応を行ったところ、ヒドロシラン部位に電子求引基を導入できることを見出した。これは非対称置換オリゴシランの新たな合成法として有用であり、この反応をさまざまな置換基に応用することによって、新たなプッシュ-プル型の非対称置換オリゴシランの合成が可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、既存の方法では合成できない複雑な構造を持ったオリゴシラン化合物の合成である。昨年度の成果で得られたオリゴシランは、いずれも新規化合物であり、既存の方法では合成の難しかった化合物である。化合物によっては収率の高くない例もあるが、現時点で本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに合成した非対称オリゴシランへの置換基導入反応を引き続き検討し、種々のオリゴシラン合成を行う。特に、ヒドロシラン部位への置換基導入において、様々な遷移金属触媒反応を検討する。また、基質に用いるオリゴシランの多様性の拡張にも引き続き検討を続ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度と同様に、主に消耗品費に研究費を用いる予定である。これは、本研究の性質上当然のことであるが、日々の実験に必要な金属試薬、有機化合物試薬、有機溶媒、ガラス器具などは、様々な種類のものがその時々の進捗状況によって必要となり、その都度購入しなくてはならないためである。また、研究成果の発表のための国内旅費にもその一部を使用する予定である。
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Research Products
(8 results)