2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550045
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
杉原 儀昭 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00272279)
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Keywords | 有機合成化学 / 有機典型元素化学 / 複素環化学 / 薬化学 |
Research Abstract |
導入する硫黄原子の数を制御でき,かつ取り扱いやすい硫化剤を開発することと.それらの有機合成への応用を検討することを目的とする.申請者らが開発した塩化アルコキシカルボニルスルフェニル(1)を用いたアルケンからチイランのワンポット合成法の有用性を探る目的で,ジエンやヘテロ原子を有するアルケンなどに適用した.環状非共役ジエンでは(1)を当量用いたときには対応するモノチイランが選択的に得られ,二つの二重結合部における反応性の違いが観測された.鎖状非共役ジエンでは.(1)を当量用いたときには選択的なチイラン生成とはならなかったが,2当量用いるとビチイランが生成した.アリルエーテルとアリルフタルイミドでは対応するチイランが得られたのに対し,アリルスルフィドやアリルスルホンを用いた場合には,隣接基関与やα水素の高い酸性度により,複雑な混合物が生成した,3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン 1,1-ジオキシド(2)の硫化能を検証する目的で,固体のアルケンあるいはホスフィンとシリカゲルとを一緒にすりつぶしたのち放置する固体反応を検討した,2,2'-ビアダマンチリデンでは対応するチイランを与えたが,2-メチレンアダマンタンとの反応ではアルゴン雰囲気下でも2-メチル-2-アダマンタノールが得られた.ホスフィンとの反応ではホスフィンスルフィドが生成することをIRにより確認した.ビスムタンスルフィド(3)や2,4-ジチアジビスメタンなど5価のビスマス化合物を合成することを目標に,トリアリールビスマスと塩化トリフェニルメタンスルフェニル(4)を作用させると,MSの結果から(3)の可能性がある黄色固体が微量ながら得られた.アミンスルフィドの合成についてはDABCOと(1)を用いて行い,硫黄を含むアミン誘導体が得られたが,現在のところ単離には至っていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)およびその類縁体の合成と硫化反応については,申請者らがこれまでに見いだしたチイラン合成法が非共役ジエンやヘテロ原子を含むいくつかのアルケンに適用できることを明らかにした.複雑な混合物を与えたアリルスルフィドについては,副反応を制御するために,(1)との反応前にスルフィドの硫黄原子と銅(I)塩で錯体を形成させることを試みたが,不調に終わった.共役ジエンでは,溶媒の極性や反応温度を変化させたが,熱力学支配付加反応を抑制することが困難であることがわかった.本法の適用範囲を検索することで,従来法では単離を含む複数段階を踏んだチイラン合成法の別法としての有用性が明らかになってくるであろう.なお,複数のチイランを含む化合物が高屈折率プラスティックレンズのモノマーとしてとして実用されていることから,非共役ジエンからチイランのワンポット合成は特に有用と考えられる.(2)およびその誘導体の合成と硫化反応については,炭素炭素二重結合上の置換基の種類により,固体反応の生成物の種類が異なることを新たに明らかにした.すなわち,2-アダマンチリデン基や9-ベンゾノルボルネニリデン基などかさ高い置換基をもつ四置換アルケンではチイランが生成すること,イソプロピリデン基をもつものではメチル基水素が硫黄や酸素原子に置換されること,メチレンの場合にはマルコフニコフ則に従い3級アルコールになることである.不安定な高酸化状態から安定な低酸化状態への還元されやすさを利用した新規な硫化試薬の開発では. ビスマスや窒素原子を含む化合物に着目し,ビスムタンおよびアミンと(1)を反応させると,硫黄を含む化合物が生成した.いずれも構造決定には至っていないが,新たな硫化試薬合成への道筋が開けたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
[新規な塩化アルコキシカルボニルスルフェニルおよび関連化合物の合成と硫化反応]では,これまでに検討していなかったアリルアシラートなどヘテロ原子を含むアリル化合物やエノールエーテルについて検討し,ワンポットチイラン合成法の適用範囲を探る.また,本年度の検討において,チイラン合成の二段階目のアルカリ性加アルコール分解で複雑な混合物を与えたアリルスルホンについては,リパーゼなどを用いた穏和な条件での加水分解について検討する.さらに,アルキンや電子供与性置換基が結合したベンゼン誘導体,π電子過剰ヘテロ芳香族化合物と(1)の反応についても検討する.[3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン 1,1-ジオキシドおよび関連化合物の合成と固相での硫化反応]では,二塩化-1,2-ベンゼンジスルホニルとオリゴ硫化物塩との反応を利用してベンゾオリゴスルフィド-1,1,ω,ω-テトロキシドを新たに合成し,その硫化能の検証を行う.[ビスムチンスルフィドおよびチオヨードソベンゼンの合成と硫化反応]では,トリアリールビスムタンと(4)の反応の最適化条件を探索し,(3)の収率向上を目指す.(1)を用いた(3)や2,4-ジチアジビスムタンの合成についても検討する.また,チオヨードソベンゼンの合成検討では,ヨードベンゼンと(1)や塩化硫黄類の反応やヨードソベンゼンと五硫化リンやLawessson試薬の反応について検討する.アミンスルフィドの合成と硫化反応については,キヌクルジン誘導体やピリジンを出発物質として検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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