2011 Fiscal Year Research-status Report
シクロプロパン開裂を鍵とする高選択的有機合成反応の開発
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23550048
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西井 良典 信州大学, 繊維学部, 准教授 (40332259)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有機合成 / 有機反応 / シクロプロパン / 生理活性天然物 |
Research Abstract |
我々は、1) シクロプロパンの開裂を伴う高ジアスレテオ選択的環拡大反 応を鍵反応とする cyclogalgravin のジアステレオ選択的全合成を達成した。すなわち、trans-1-アリール-2-メ チル-1,2-ジヒドロナフタレンが高選択的に合成できること反応を見いだし、これを天然物全合成に応用した。次に、trilobatin A, B の全合成を目指したジヒドロナフタレンセグメントも高ジアステレオ選択的に合成することができた。さらに、エナンチオ選択的な合成を行うために、ジハロシクロプロパンを出発物質とするのではなく、ジアゾ化合物の不斉配位子-金属触媒を用いる分子内不斉シクロプロパン化により光学活性シクロプロパン (80 % ee) を合成した。続いて不斉転写を含む環拡大反応による光学活性 1-アリールジヒドロナフタレン (80 % ee:不斉転写率 100% ) の合成を達成した。2) ホモエノラートを用いるマイケル付加反応や、エノラートを用いるホモマイケル付加反応は知られているが、ホモエノラートを用いるホモマイケル付加反応は報告されていない。そこで、我々はシロキシシクロプロパン類 (ホモエノラート等価体) を用いたシクロプロパンジカルボン酸ジエステルへのホモマイケル付加反応を検討した 。ルイス酸存在下、シロキシシクロプロパン類 とシクロプロパンジカルボン酸ジエステルを反応させたところ、シクロプロピルアルコールのホモマイケル付加体 (C-O 結合形成) が主生成物として得られ、ホモエノラートのホモマイケル付加体 (C-C 結合形成) は全く得られなかった。これらの知見をもとに、α-ヒドロキシエステルやα-チオヒドロキシエステルなどのエステル類を用いる同様のホモマイケル付加反応を検討したところ、マイケル付加生成物を収率良く得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)中心不斉から軸不斉への不斉変換反応を鍵反応とする軸不斉リグナンの全合成(不斉変換)、2)光学活性 1-アリールジヒドロナフタレン合成:不斉伝搬環拡大反応(不斉記憶)、3)1,1-シクロプロパンジカルボン酸ジエステルへの不斉ホモマイケル付加反応(不斉誘起)、4)1-シロキシ-1-アルコキシシクロプロパンの不斉付加反応(不斉誘起)、5)シクロプロパン開裂を利用するホモクライゼン転位反応(不斉誘起/不斉転写)計画作成時に挙げた5項目の上記目標にうち、平成23年度には、1)~4) の検討を行い、1) および 2) については、研究実績の概要に示した通り順調な進展が認められる。3) および 4) についてはラセミ合成反応を検討し、研究実績の概要に示した通りの予想とは異なる C-O 結合系反応が優先するホモマイケル付加が進行することが分かった。しかし、今後、不斉合成反応への展開に期待できる結果を得た。ただし、東日本大震災の影響で途中まで内定額の全額が支給されるかどうか不透明であったため、内定額の 70% をめどに研究を行ったことで、ガラス器具購入をやや削減し、また、高価な触媒を用いる研究が実行できない部分もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降、引き続き以下の5項目の検討を行う。 1)中心不斉から軸不斉への不斉変換反応を鍵反応とする軸不斉リグナンの全合成(不斉変換)2)光学活性 1-アリールジヒドロナフタレン合成:不斉伝搬環拡大反応(不斉記憶)3)1,1-シクロプロパンジカルボン酸ジエステルへの不斉ホモマイケル付加反応(不斉誘起)4)1-シロキシ-1-アルコキシシクロプロパンの不斉付加反応(不斉誘起)5)シクロプロパン開裂を利用するホモクライゼン転位反応(不斉誘起/不斉転写)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、東日本大震災の影響で途中まで内定額の全額が支給されるかどうか不透明であったため、内定額の 70% をめどに研究を行っていた。平成24年度以降は、昨年度セーブした分を順調に使用して、高価な触媒、研究ガラス器具を適宜購入し、研究効率を上げたい。
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