2012 Fiscal Year Research-status Report
シクロプロパン開裂を鍵とする高選択的有機合成反応の開発
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23550048
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
西井 良典 信州大学, 繊維学部, 准教授 (40332259)
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Keywords | シクロプロパン / 不斉合成 / 生物活性化合物 / 天然物全合成 / ジヒドロナフタレン / リグナン / 不斉転写 / 環拡大 |
Research Abstract |
1)中心不斉から軸不斉への不斉変換反応を鍵反応とする軸不斉リグナンの全合成 抗ウィルス活性を有する retrojucticidin B の軸不斉誘導体 6’-methoxy-retrojusticidin B の不斉合成を試みたが、不斉変換反応において光学純度が低下する結果を得た。 2)光学活性1-アリールジヒドロナフタレン合成:不斉伝搬環拡大反応 ジクロロシクロプロパンの二つの C-Cl 結合を効率的に C-C 結合に変換する反応 (Org. Lett. 2008, 10, 5453) により合成できるヒドロキシメチルシクロプロパンカルボン酸エステルに、Sc(OTf)3 を作用させると 1-フェニル-1,2-ジヒドロナフタレンを与える環拡大反応 (Chem. Lett. 2010, 39, 194.) を見いだした 。これらの反応を活用して、1-フェニル-2-アルキル-1,2-ジヒドロナフタレンの合成を検討し、ジアステレオ選択性については、1-位と2-位の置換基はトランス位になることを新たに確認した 。 更なる展開として、ジヒドロナフタレン天然物 (±)-Cyclogalgravin およびその類縁体の全合成を達成した。また、Trilobatin A および B の全合成へ向けたジヒドロナフタレンセグメントの合成ができた。 一方、光学活性体の合成を目的として、ジクロロシクロプロパンを出発物質とせず、金属触媒および有機分子触媒を用いいる多置換シクロプロパンの不斉合成を検討し、高光学純度(98% ee )の環拡大反応前駆体シクロプロパンを合成できた。続いて、鍵反応となる環拡大反応を行ったところ、優れた転写率で不斉転写 (98% ee → 98% ee) が進行することを見いだした。分子内不斉シクロプロパン化を鍵反応して、Podophyllic aldehyde の全合成も達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)中心不斉から軸不斉への不斉変換反応を鍵反応とする軸不斉リグナンの全合成(不斉変換) 2)光学活性 1-アリールジヒドロナフタレン合成:不斉伝搬環拡大反応(不斉記憶) 3)1,1-シクロプロパンジカルボン酸ジエステルへの不斉ホモマイケル付加反応(不斉誘起) 4)1-シロキシ-1-アルコキシシクロプロパンの不斉付加反応(不斉誘起) 5)シクロプロパン開裂を利用するホモクライゼン転位反応(不斉誘起/不斉転写) 計画作成時にあげた5項目の目標の中で、これまで、1)~5)の検討を行い、1)および2)については研究実績の概要に示したように順調な進展が認められる。1)は光学純度の問題点があるが、特に2)は高エナンチオ選択的な不斉シクロプロパン化の検討により、予想以上に展開し、多くの強い生物活性化合物の合成が可能になってきた。今後も2)の課題を大きく発展させていく。一方、3)および4)の検討は23年度にラセミ体合成を検討したが、24年度は光学活性体の合成を検討したところ、低い光学純度 (30 % ee) で進行する結果を得た。現在、配位子の探索を行っている。5)については平成25年度に検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は以下の1)~5)の項目を検討しつつ、大きな発展があった2)を用いた生物活性物質の新規全合成を重点的に展開する。すなわち、2)を鍵反応とする、Podophyllic aldehyde や Trilobatin 類の不斉ジヒドロナフタレン天然物の合成を行う。 1)中心不斉から軸不斉への不斉変換反応を鍵反応とする軸不斉リグナンの全合成(不斉変換) 2)光学活性 1-アリールジヒドロナフタレン合成:不斉伝搬環拡大反応(不斉記憶) 3)1,1-シクロプロパンジカルボン酸ジエステルへの不斉ホモマイケル付加反応(不斉誘起) 4)1-シロキシ-1-アルコキシシクロプロパンの不斉付加反応(不斉誘起) 5)シクロプロパン開裂を利用するホモクライゼン転位反応(不斉誘起/不斉転写)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、平成23年度の東日本大震災により実施できな かった分もあわせて実施予定であったが、24年度の当初計画分は完了したものの、23年度未実施分の一部が研究員不足により遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。平成25年度は、昨年の 1.5 倍の研究員数(9人)になったので、これらを順調に使用して、総括へ向けて効果的な試薬および触媒を購入し研究効率を上げていく。
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Research Products
(2 results)