2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550055
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
林 実 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (20272403)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ホスフィニン / ホスホール / ホスフィン / 有機リン化合物 / リンイリド |
Research Abstract |
本研究の主要な対象化合物骨格はリンイリドを含む6員環共役化合物,λ5-ホスフィニンのうち,2,6位の電子吸引基により強い蛍光を発する特異な化合物群である。これまでに2つのシアノメチル基を有するホスホニウム塩とイミン2分子の反応により一挙に3分子の縮合が起こり,当該ホスフィニン骨格が形成されることを見出しているが,本年度行った反応過程の詳細な解析により,本反応がホスホニウム塩α位でイミンと反応したアルケニルホスホニウム中間体A,さらに反対側のα位との反応の後異性化と電子環状反応で生じる中間体Bを経由してジヒドロホスフィニンを形成し,最終的な脱水素(酸化)によりπ共役系が拡張して生成物を与えることがわかった。これらの解析を基に,イミン由来の置換基が導入されるホスフィニン3,4位に様々な置換基を導入するために段階的な縮合反応を設計し,検討を重ねた結果,イミン窒素上の置換基が異なる2つのイミンを使い分けることで,ホスフィニン骨格を形成する縮合反応において段階的に2つの置換基を導入できるようになった。これは今後の研究遂行上,極めて重要な進展である。実際にいくつかの置換基を導入したモデル化合物では,蛍光波長,発光効率が置換基により大きく変化したことから,置換基チューニングによる物性調整が可能であることが示せた。現在のところ合成反応における選択性,効率にまだ改善の余地があり,今後も検討を続ける予定である。 一方,本検討と並行して,ホスフィン部分の置換様式変更に必要となる原料ホスフィン化合物の効率的合成法開発,リンイリド含有共役系の新規な変換反応開発にも取り組み, 極めて効率的なホスフィン合成法と,λ5系からλ3系への変換反応も見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度中の研究計画では,主に多段階カスケード反応の制御に必要となるホスフィニン形成縮合反応の詳細な反応過程解析と,反応生成物の構造解析を行うこととなっていた。このうち反応生成物の構造解析はX線結晶構造解析も含めて成功しており,また本年度の研究実績欄にも記載したとおり,多段階反応の解析により中間体の構造を含む反応過程を明らかにし,さらに平成24年度研究計画にあげた,多段階反応の段階的制御方法についても,有望な新手法を見出すに至っている。加えてさらに次の課題であるホスフィン部分の変換についても必要な合成手法開発,変換反応開発の目処を付けている。このように,研究は当初の計画以上に順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究実績欄にも記載したとおり,ホスフィニン骨格を形成する縮合反応において段階的に2つの置換基を導入できる目処はついたが,現在のところ合成反応における選択性,効率にまだ改善の余地があり,今後も検討を続ける予定である。さらに当初の研究計画通り,各種置換様式を持つ対象化合物を合成し,その構造物性相関を詳細に調査する予定である。並行して合成に必要となるホスフィン合成手法開発とリンイリド変換反応の検討も続ける予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,研究の性格上,多数の合成条件検討及び多検体の合成が必須であり,有機合成実験,物質精製,構造解析,物性解析が研究の中心となる。それらに用いる反応設備,分析装置(核磁気共鳴装置,赤外分光,紫外可視分光,蛍光分光,質量分析およびX線構造解析装置等は,研究室および学内共同利用施設に現有のものを使用する予定であり,研究遂行上必要な大型機器については,概ね学内にて利用できる体制にある。一方,昨年度の消耗品については,研究開始当初に支給額が不確定な状況にあったため,必要量の2/3程度に抑制して調達してきたが,本年度は研究の進展状況もあり,昨年度以上に実験量が増え,多検体の合成に必要な試薬の種類も増えることから消耗品経費も増加すると予想される。したがって昨年度未使用分に加えて本年度分も予定通りほとんど消耗品に使用する見込みである。なお,本研究では当初の計画から実験の遂行上多量に必要になると考えられる合成試薬・実験器具等の消耗品が経費の中心である。
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