2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550055
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
林 実 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (20272403)
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Keywords | ホスフィニン / ホスホール / ホスフィン / 有機リン化合物 / リンイリド |
Research Abstract |
本研究の主要な対象化合物骨格はリンイリドを含む6員環共役化合物,λ5-ホスフィニンのうち,2,6位の電子吸引基により強い蛍光を発する特異な化合物群であり、これまでにイミン窒素上の置換基が異なる2つのイミンを用いた段階的な縮合反応により、ホスフィニン3,4位に様々な置換基を導入できることを明らかにしている。 さらに本年度は、新たに開発に成功したアリールホスフィン化合物の新規自在合成法を利用し、ホスフィニンの5価リン原子上の2つの置換基を変えた誘導体の合成にも成功した。合成反応における選択性,効率はまだ改善の余地があり,今後も引き続き検討を続ける予定である。 これまでに合成した様々な位置に様々な種類の置換基を有する誘導体の吸収・発光スペクトルと蛍光量子収率の測定を行い、置換基の位置と種類による発光波長と発光効率への影響を調査した。その結果、本研究で扱うλ5ホスフィニン化合物においては、環上4位の置換基効果が大きく、3位及びリン原子上の置換基効果は少ないことが明らかとなった。また、2,6位の電子吸引性置換基は必須であることから、環上2,4,6位の置換様式によって発光特性が決定される。一方で、蛍光量子収率は期待したほど高い値ではなく、今後はその向上を目指して分子設計の改良に取り組む予定である。 一方、リンイリド含有共役系の新規な変換反応開発も継続して行い,λ5系からλ3系への変換反応に続くクロスカップリング反応により、λ3型複素環の共役拡張の可能性も示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度中の研究計画では,反応制御方法開発の継続と、系統的な置換誘導体の合成を行うこと、及びその物性評価と分子設計へのフィードバックを行うこととしていた。このうち誘導体合成方法については、本年度の研究実績欄にも記載したとおり,未だ改善の余地はあるものの、環上に各種置換基を導入した誘導体の合成・単離に至っており、物性評価に必要な環境は整ったといえる。さらに平成24年度中に発表することができたホスフィン合成手法を利用してホスフィン部分の置換まで行うことができている。一方で、評価した物性は期待したほどの値を示さなかったこと、及び様々な置換基効果の検証から、今後さらなる分子設計が必要であることも明らかとなっている。これらのことをあわせても、研究は当初の計画どおり順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究実績欄にも記載したとおり,ホスフィニン骨格を有する様々な誘導体を合成して物性評価を行ったが、現在のところ合成反応における選択性,効率、さらには合成した化合物の蛍光効率に改善の余地があり,今後は分子設計を含めて引き続き検討を続ける予定である。特に置換基効果の大きい位置における共役系の拡張を含めた置換様式の変更に取り組む予定である。また、並行してリンイリド変換反応による複素環拡張の検討も続ける予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,研究の性格上,多数の合成条件検討及び多検体の合成が必須であり,有機合成実験,物質精製,構造解析,物性解析が研究の中心となる。それらに用いる反応設備,分析装置(核磁気共鳴装置,赤外分光,紫外可視分光,蛍光分光,質量分析およびX線構造解析装置等)は,研究室および学内共同利用施設に現有のものを使用する予定であり,研究遂行上必要な大型機器については,概ね学内にて利用できる体制にある。したがって本年度は、当初からの予定通り研究費の大部分を消耗品に使用する見込みである。なお,本研究では当初の計画から実験の遂行上多量に必要になると考えられる合成試薬・実験器具等の消耗品が経費の中心となっている。
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