2013 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族ヘテロ環化合物の特性を活かした動的機能性超分子金属錯体の開発
Project/Area Number |
23550056
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 芳雄 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00221086)
|
Keywords | フラーレン / 電荷分離 / ポルフィリン / プロリノール / 不斉有機触媒 / マイケル付加反応 |
Research Abstract |
前年度までに、4,4'-ビピリジンの2,6-位にポルフィリンを導入した複素環化合物とそのルテニウム金属錯体の合成に成功したが、電子受容体として非共有結合的に導入を検討したC60などのフラーレン類との会合定数が数千程度しかないことがわかり、期待していた電荷分離種の観測には至らなかった。この会合定数を大きくするために、ポルフィリン環の配置の検討なども行ったが合成化学的な問題が多く、未だ検討中である。そこでポルフィリン環以外の置換基でフラーレン類を捕捉する方法も検討した。フラーレンの形状に合わせてお椀形の置換基が適当と考えられたのでコランニュレンの導入を検討した。しかし、複数のコランニュレンの凹面を捕捉分子の方に向きを揃えて配置させることは難しく、今後の課題となっている。 一方、芳香族ヘテロ環化合物の特性を活かした別の研究として不斉有機触媒の開発についても検討を行った。即ち、既に優れた不斉有機触媒として知られているα,α-ジフェニルプロリノールにある二つのフェニル基の一方を2-ピリジル基に置換した新規プロリノール誘導体を合成した。この合成では、2-ピリジル基の導入により新たに不斉炭素が生じるが、再結晶とカラムクロマトグラフィーによって二つのジアステレオマーの効率的な分離を達成した。同時に、α-(2-ピリジル)プロリノールの合成も行ったが、この場合は一方のジアステレオマーを高立体選択的に合成できた。こうして得られた新規プロリノール誘導体を不斉マイケル付加反応の触媒として用いたところ、α-フェニル-α-(2-ピリジル)プロリノールを用いた場合、そのジアステレオマーによって不斉誘起能に大きな違いが生じることが分かった。本反応は水素結合で基質を活性化するタイプの反応であることを示している。 以上の成果は、芳香族ヘテロ環化合物の化学において重要であり、今後、学術論文にして公表する。
|