2013 Fiscal Year Annual Research Report
シクロブテンカルボン酸エステルを基質とする連続メタセシス反応の開発とその応用
Project/Area Number |
23550060
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高尾 賢一 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70287481)
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Keywords | メタセシス / 生物活性天然物 / 不斉全合成 / シクロブテンカルボン酸 / ブテノリド |
Research Abstract |
連続メタセシス反応は、一度の反応操作で複数の炭素-炭素結合の形成もしくは切断がおこり、より直截的に骨格変換を達成できる特長を有している。本研究では、今までに積極的に利用されることが少なかったシクロブテンカルボン酸エステルを基質に用いた新規な連続メタセシス反応の開発に主眼を置き、それに基づく生物活性天然物の全合成を目的とした。このような骨格転位を伴うγ-ブテノリドへの変換反応は既知の方法論とは異なる独創的なものであり、有機合成化学上、大いに意義のあるものと考えている。 平成23年度はシクロブテンカルボン酸エステル誘導体を基質に用いて、開環-閉環メタセシスの検討を行った。その結果、効率良くγ-ブテノリドへの変換反応が進行する条件を見出すことができた。平成24年度においては、本反応を生物活性天然物クラビラクトンの全合成に応用することを考えた。クラビラクトン類はハラタケの一種であるホテイシメジの培養液より単離された天然有機化合物である。これらの化合物は上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害活性を有しており、ヒトがん細胞に対し細胞増殖抑制活性を示すことが報告されている。クラビラクトンの全合成のため、多置換ベンズアルデヒド誘導体から誘導したシクロブテンカルボン酸エステル誘導体を用いて開環-閉環メタセシスを行ったところ、望むγ-ブテノリド誘導体が収率良く得られた。さらなる化学変換の検討の結果、閉環メタセシスによる10員環構築を経てクラビラクトンAのラセミ全合成を達成した。平成25年度においては、確立した合成経路に不斉合成反応を取り入れ、(+)-クラビラクトンAおよび(-)-クラビラクトンBの不斉全合成に成功した。本研究により、シクロブテンカルボン酸エステルを基質に用いた開環-閉環メタセシスの有用性を実証することができた。
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