2011 Fiscal Year Research-status Report
シレンおよびゲルメンの新規合成法の開発と基本的性質の解明
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23550063
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Research Institution | Kurashiki University of Science and the Arts |
Principal Investigator |
仲 章伸 倉敷芸術科学大学, 生命科学部, 教授 (00289232)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ケイ素 / ゲルマニウム / シレン / ゲルメン |
Research Abstract |
平成23年度はシレンの合成法の確立と、シレンとアセチレン類など様々な不飽和化合物との反応を行い、その化学的挙動を明らかにすること、およびアシルポリシリルゲルマニウムの合成法の開発に焦点を絞り、次のように研究を行った。 シレン合成の前駆体として、アシルポリシラン類を選択し、アシル基として、ベンゾイル、ピバロイル、アダマントイルおよびメシトイル基を含むアシルトリス(トリメチルシリル)シラン類を合成した。また、合成したアシルポリシラン類の熱反応を行うと、トリメチルシリル基のケイ素上から酸素上への転位により、シレンが生成することを明らかにした。 アシルポリシラン類の熱反応をアセチレン類存在下で行うと、熱的に生成させたシレンとアセチレン類との[2+2]環化付加反応から生成したシラシクロブテン類が得られることが明らかになった。 生成したシラシクロブテン類をさらに高い温度での熱反応を行うと、ケイ素-炭素結合の開環反応が進行し、シラブタジエンが反応中間体として生成していることが明らかになった。このシラシクロブテン類は、アルコール類および2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンなどのジエン類と反応し、様々な新規化合物を与えることが分かった。 また、ゲルメンの新規合成法の開発を目指し、アシルポリシリルゲルマニウム類の効率的合成法の開発を行った。まず、テトラクロロゲルマニウムとトリメチルシリルクロライドのリチウムによるカップリング反応により、テトラキス(トリメチルシリル)ゲルマニウムを合成した。これをメチルリチウムによりリチオ化し、様々な置換基をもつアシルクロライドと反応させることにより、アシルトリス(トリメチルシリル)ゲルマニウムを得ることに成功した。合成したアシルポリシリルゲルマン類を様々な条件下で反応を行い、ゲルメン生成の予備的な知見を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機ケイ素化合物、有機ゲルマニウム化合物の性質はまだまだ未知の部分が多く、幅広い基礎研究が必要であると考えられる。今回の研究テーマであるケイ素-炭素二重結合化学種(シレン)については、アシルポリシラン類を前駆体とすることで容易に合成することに成功した。また、アセチレン類との反応により合成したシラシクロブテン類から、新たなシレンの合成法も確立できた。ゲルマニウム-炭素二重結合化学種(ゲルメン)についても、アシルポリシリルゲルマン類を出発原料とすることで、合成できる可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度で得た知見をさらに発展させるために、tert-ブチル基などの嵩高い置換基をもつ別のタイプのアシルポリシラン類を合成し、その熱反応を行うことにより新たなシレンを合成し、その反応性を明らかにする。また、平成23年度で合成法を確立したアシルポリシリルゲルマニウムの熱反応を行い、ゲルメンの新規合成法の開発を行う。 新たなアシルポリシラン類として、(tert -ブチル)ビス(トリメチルシリル)アシルシランを合成し、その熱反応により生成したシレンと様々な不飽和化合物との反応を行い、化学的挙動を検討し、置換基によるシレンの反応性の違いを探究する。また、この反応により生成したシレンは、幾何異性体が存在しているので、その分離を試み、立体化学についても明らかにしたいと考えている。 アシルポリシラン類の熱反応により生成させたシレンとニッケル、白金、パラジウムなどの遷移金属錯体触媒反応を様々な捕捉剤存在下で行う。また、遷移金属錯体との化学量論反応を行い、シレン-遷移金属錯体の合成を試みる。 合成した様々な置換基を持つアシルトリス(トリメチルシリル)ゲルマニウムの熱反応を、捕捉剤の存在下および不在下で行い、ゲルメン生成の最適温度を明らかにする。 熱的に生成させたゲルメンと様々な不飽和化合物との反応を行い、その化学的挙動を明らかにする。具体的には、ゲルメンとフェニルアセチレン、tert-ブチルアセチレン、トリメチルシリルアセチレンなどの末端アセチレン、および2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、シクロヘキサジエンなどのジエン類との反応を行い、得られた生成物から反応機構を解明する。また計算化学的手法も駆使し、遷移状態の構造やそれぞれの反応の活性化エネルギーなどを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
シレンおよびゲルメン合成のための原料であるクロロシラン類、クロロゲルマン類などの試薬の購入に大部分をあてたいと考えている。また、得られた研究成果の発表のための旅費も計上したいと考えている。
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Research Products
(4 results)