2012 Fiscal Year Research-status Report
希土類含有ぺロブスカイト化合物の多形構造と磁気的性質
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23550065
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日夏 幸雄 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70271707)
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Keywords | 希土類 / ぺロブスカイト / 結晶構造 / 磁気的性質 |
Research Abstract |
ペロブスカイト型化合物は、強誘電性、イオン伝導性、超伝導性、巨大磁気抵抗、触媒機能性など多彩な機能を発現、これまで多くの研究がなされてきた。しかし、その大部分は第一遷移金属がペロブスカイトABO3のBサイトに入った酸化物で、サイズの大きな希土類元素はペロブスカイトを構成しても物性を決定するBサイトに入らずAサイトに入ってしまい、その結果、希土類元素に由来する物性の報告はほとんどない。そこで希土類が物性の主役となったぺロブスカイト型複合酸化物の多形構造とその磁気的性質を調べるため、ペロブスカイトABO3の物性を決定するBサイトに希土類とサイズの小さな遷移金属を組み合わせた複合酸化物の合成に挑んだ。 今年度は遷移金属としてオスミウムを選び、ペロブスカイトABO3(A=Ba)のBサイトをオスミウムと希土類が1:1の比で占める複合酸化物の合成に成功した。オスミウムと希土類はNaCl型にBサイトで構造秩序していること、そのBO6八面体は隣の八面体と頂点共有していること、結晶の対称性は高くほぼ立方晶であることなどの構造に関する知見を得た。磁化率、比熱の測定から低温で反強磁性転移し、その転移温度はBサイトの希土類の種類により、かなり変化する(2.5-100K)ことなどを見出した。磁気エントロピーの解析から、いずれの磁気転移にも、オスミウムと希土類のスピンが関与していることを定量的に示すことができた。希土類(4f電子系)のみなら磁気秩序してもせいぜい10-20Kであろうが、オスミウムの5d電子との相互作用により、強い磁気秩序を引き起こしたわけである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進んでいる。しかし、磁気秩序が見られた化合物については、中性子回折からその磁気構造を決定することにしていたが、研究用原子炉(茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構に設置されている全国大学共同利用施設)が平成23年度と同様、平成24年度も稼働しなかったので中性子回折実験が行えず、この点については研究が進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
【合成】 ①初年度、前年度で得た結果、経験をもとに、遷移金属として、ビスマス、アンチモンを選び、これと希土類元素がオーダリングした秩序化ペロブスカイト化合物A2BB'O6, A3BB'2O9等の新規合成を試みる。B元素、B'元素が構造的にオーダリングする場合、しない場合について、その原因を結晶化学の視点から考察する。その結果をもとに、Aサイトに入る元素をアルカリ土類金属(+2価)だけでなく、アルカリ金属(+1価)、Laなど+3価をとる金属元素を入れ、Bサイトに入る金属元素の酸化状態を変えた化合物について、検討する。 ②秩序化ペロブスカイト化合物にさらに伝導性を持たせるために、酸素原子を硫黄原子で置き換えた複合硫化物A2BB'S6、A3BB'2S9等の新規合成に挑戦する。このため、出発物質の酸化物をCS2/N2雰囲気下で硫化物に変え、それらを目的の金属比に秤量し、封管中で合成反応を行なう。 【構造解析、物性】 <平成23,24年度>と同様、X線回折、中性子回折、磁化率、比熱等の測定を行い、合成した新規化合物①、②の結晶構造、電子構造、磁気的性質を主とした物性を測定・解析し、d-f混合電子系の示す新しい物性の探索を行なう。 さらに、必要に応じ、メスバウア分光測定、電子スピン共鳴(ESR)測定を行い、Bサイトイオンの内部磁場、結晶電場、化学的環境に関する知見を得る。磁性イオンの局所構造、およびその磁性イオンと周りとの磁気的挙動を明らかにするためには、メスバウア分光測定は有効な研究手段であり、希土類元素については151Euを、また遷移金属については57Feを、磁性イオンサイトにドープし、局所構造に関する情報を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に特に変更はなく、従って研究費の使用計画にも変更はない。 経費の節減によって生じた前年度の使用残金については、化合物合成に使用する遷移金属が白金族元素であるため高価なので、その試薬購入に充てる。
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Research Products
(7 results)