ソフトマテリアル場における生体金属モデル錯体の挙動 触媒機能に対する反応場の影響

2011 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 23550075
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 山口 和也 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80252550)
• Project Period (FY): 2011-04-28 – 2014-03-31
• Keywords: 生体金属モデル錯体 / ソフトマテリアル / 反応場 / 生物無機化学

Research Abstract

生体金属モデル錯体がソフトマテリアル内に存在するとき、ソフトマテリアルが反応場として生体金属モデル錯体に及ぼす構造や反応性の影響を明らかにすることを目的として、平成２３年度は、生体金属錯体を包有するソフトマテリアルの分子設計および調製を行った。また、従来の溶媒系や固体表面系との相違について考察を行った。ソフトマテリアルの成分として、コラーゲン、ナフィオン、リポソーム、キトサンの４種を試みた。構造蛋白質であるコラーゲン、導電性人工高分子であるナフィオンについては、触媒機能を有する生体金属モデル錯体の分散・固定化に成功した。また、ゲル状フィルムの調製に成功し、電極表面への修飾を実現した。しかし、当初予定していた脂質であるリポソームと糖質であるキトサンについては、水系への溶解性が問題となり、今後の課題を残すこととなった。リポソームに関しては、研究計画当初予定していなかった新しい手法GUV（巨大成層ベシクル）法を応用することで、生体金属錯体含有ゲルフィルムの作成ならびに電極表面への固定を実現できる可能性がわかった。現在は、作成条件の精密化を行っている段階である。また、キトサンに関しては、キトサンに化学修飾を施すことにより、ゲル化を実現できることがわかってきた。ソフトマテリアルに分散・固定する還元触媒機能性金属錯体については、当初の予定どおり、置換基を導入した十数種類の誘導体の合成を完了した。また、各置換基が及ぼす錯体の電子構造への影響についても系統的に分類し、構造解析および酸化還元電位の観測を行った。金属イオンへの配位環境変化が電子的および立体障害的に起こっていることが判明した。以上より、次年度の研究計画への準備段階が整った。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

ソフトマテリアル場の形成において、当初計画していた手法を検討したところ、構造蛋白質、導電性人工高分子は、計画どおり実施できた。しかし、脂質および糖質では、水への溶解性の問題が発覚した。そのため、必ずしも、計画通りの進捗ではない。しかし、その問題解決方法を平成２３年度内に見つけ出した。その遅れている分は、平成２４年度中に、十分取り戻すことができると考えている。

Strategy for Future Research Activity

平成２３年度で得られた（４種の成分からなる）ソフトマテリアルの作成および各種の置換基を導入した還元触媒機能性錯体の合成を行い、当初の計画どおり、反応場としてのソフトマテリアルの最適化条件を求める予定である。ただし、脂質と糖質に関しては、当初計画とは異なる形態となるが作成に問題はないと考えている。新たに作成したソフトマテリアル場における錯体の電子構造の解析を行う。さらに、最適化して作成した生体金属モデル錯体を包有したソフトマテリアルを電極表面に固定し、電気化学特性の解析を行う予定である。そして、触媒活性の評価を行っていく。この進捗は当初の計画どおりである。これらの検討により、本研究の目的である「生体金属モデル錯体の触媒機能に対するソフトマテリアルの反応場としての影響」を解明し、高機能を発揮するソフトマテリアル場の開発を目指す。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したところ、脂質、糖質によるソフトマテリアルの溶解性の問題に直面し解決に時間を要した。そのため、当初の見込み金額と執行金額は異なることとなった。しかし、研究計画に変更はなく、前年度の研究計画を併せて、当初の研究計画に則り、平成２４年度以降に研究を実施する。