2012 Fiscal Year Research-status Report
三核環状錯体によるカプセル状分子集合体の構築と包摂分子による磁性制御
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23550080
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
鯉川 雅之 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90221952)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 泰教 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20359946)
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Keywords | 環状錯体 / 包接錯体 / フェリ磁性体 |
Research Abstract |
カプセル分子の構築素子となる環状三核Mn(III)錯体,Fe(III)錯体を用いて,内包させる錯イオンとの自己集積化反応に取り組んだ。内包分子は,三回対称軸を有しカプセルユニット錯体との水素結合の生成が可能な種々の金属イオンによるヘキサアンミン錯体およびトリスエチレンジアミン錯体を用いたが,結果としてヘキサアンミンニッケル(II)硝酸塩をゲストとした場合のみゲスト分子を含む錯体を得ることができた。包摂体を単離してはいるがまだ磁気物性の測定が完了していないため,次年度は継続して物性測定に取り組む。またこれらの過程において,比較検討のために類似配位子によるMn錯体の合成を行っていたが,こちらの配位子の場合も環状三核Mn錯体が生成することを単結晶X線構造解析により明らかにした。またSQUID装置による磁化率測定から,この錯体は強い強磁性的相互作用が発現していることが確認でき,集積型錯体を得るためのユニットとして有望であることがわかった。 昨年度行ったCo(III)包摂体およびDMF包摂体の研究成果を2012年9月に開催された第40回錯体化学国際会議(スペイン)で発表した。平成24年度の成果については,本年11月に行われる第63回錯体化学討論会において報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は金属錯体を内包したカプセル構造状分子集合体の構造解析まで行う予定であったが,単結晶が得られず構造解析は行えなかったため引き続き結晶化の方法を検討して構造の同定を試みている段階である。一方で,類似配位子による三核錯体ユニットが,強磁性的相互作用を示す有望なカプセルユニットとなりうることを新たに発見することができ,こちらのルートからの分子集合体の構築を展開させられる知見を得ることに成功した。従って,当初計画からはやや遅れているものの,複数ルートを展開できたことから概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はカプセル状包摂分子の結晶化に集中的に取り組むとともに,類似配位子による環状錯体を用いた集積化を新規に展開させる。類似配位子による集積型錯体の研究においては,カプセルユニットへのダイレクトな配位結合の形成が期待できるため,ヘキサシアノ系錯体がゲスト分子として適していると考えられる。得られた結晶は,既存設備であるCCD単結晶X線構造解析装置により構造を確定したうえで,SQUID装置・ESR装置により磁気挙動を調べて磁性材料としての有効性を評価する。結晶化できない試料においても構造・電子状態の情報を得るため,昨年度システム構築したCCDマルチチャンネル分光器を用いて包摂金属イオンと三核ユニット間の電子的相互作用を解析して磁気測定にフィードバックし,特異的な磁気挙動の発現を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は最終年度であるため備品の購入予定はなく,主に消耗品である液体ヘリウムに使用する予定である(280千円×2)。他には配位子合成の原料となるジアミノレゾルシノールを購入する(約40千円)。
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